〔網虫(あみむし)〕の久六
『鬼平犯科帳』文庫巻6に載っている[むかしなじみ]は、鬼平の莫逆の友(?)を自称する古参密偵〔相模(さがみ)〕の彦十爺つぁん(60に近い)が、こともあろうにお盗めに加担しかける物語である。
爺つぁんに誘いをかけたのは、〔網虫(あみむし)〕---つまり、蜘蛛(くも)の異称をもつ久六で、20年ぶりの出会いであった。
年齢・容姿:53,4歳。矮躯(わいく)。うしろから見たら、まるで子ども。煤竹色の顔でどこに目鼻がついているかわからない。目だけがぎょろりとしている。
生国:近江(滋賀県)のどこか。p178 新装版p187 百姓の両親が、5歳の久六を見世物へ売ってしまったので、生国の記憶は「海のようにひろい水の上に舟が浮かんでいる景色だけよ」である。
探索の発端:本所二ッ目橋を林町の方へわたったところで、〔網虫(あみむし)〕の久六に声をかけられ、盗みの相談をうけたことまでは鬼平へ打ち明けた彦十であったが---。
亀戸天満宮の御輿がわたっているのが二ッ目の橋。
(『江戸名所図会』より 塗り絵師:ちゅうすけ)
久六のつくり話に、かつての自分の所業をおもいだした彦十の胸の底で、盗みの血が目をさました。それからは、鬼平への報告がぴたりととまった。
不審におもった鬼平が、おまさと夫・〔大滝〕の五郎蔵に探索を命じた。
(参照: 女密偵おまさの項)
(参照: 〔大滝〕の五郎蔵の項目)
〔網虫〕の久六は、かつての盗め仲間の〔水越(みずこし)〕の又平(50男)と甥の房治(30男)も引き込んでいた。
(参照: 〔水越〕の又平の項)
結末:日本橋橘町3丁目の町医・人見道春の家へ、いよいよ、今夜は押しこもうというとき、〔水越〕の又平の家へいそぐ彦十爺つぁんは、南本所の五間堀に架かる弥勒寺橋ですれちがった虚無僧に、尺八で首筋を強打されて失神、どこかへ運ばれていった。虚無僧は五郎蔵の変装であった。
二ッ目通りとその先に弥勒寺橋
(『江戸名所図会』 塗り絵師:ちゅうすけ)
深川・木馬の西側---島田町で灯油や蝋燭、こまごました台所道具を商っている又平の〔いなばや〕へは、鬼平のほか佐嶋忠介、酒井祐助、五郎蔵、〔小房〕の粂八が打ち込んで、全員6名を逮捕した。
(参照: 〔小房〕の粂八の項)
深川木場(『江戸名所図会』 塗り絵師:ちゅうすけ)
つぶやき:翌日、〔五鉄〕でふとんを頭からかぶって寝ている彦十へ、鬼平がいう。
「これ彦十、昨夜な、佐嶋忠介が、網虫の久六を詮議したところ、すっかり吐いたぞ。久六め、彦十に裏切られたと、歯ぎしりをして、くやしがっていたそうな」
鬼平にとって、彦十は青春時代をおもいださせてくれる「宝物」なのである。
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コメント
流石の彦十も久六の浪花節てきな口説きには弱かったようで、 すっかり同情しちゃって昔の悪い癖が出たようですね。
ところで「五月闇」のテープを持参しましょうか。 参考までに
投稿: edoaruki | 2005.09.07 19:00
ところで、「網虫の久六」から「コメント」のあいだの訳のわからん進入記事は何でしょうか?
投稿: 那の津のお加代 | 2005.09.08 13:01
>那の津のお加代さん
困ったものです。
ブログにまで、侵入してくるんですから。
コメントをオープンにしているから、仕方がないのかも。
投稿: ちゅうすけ | 2005.09.08 16:18