女賊お照
『鬼平犯科帳』文庫巻7の巻頭に置かれている[雨乞い庄右衛門]で、お頭の庄右衛門(58歳)がもう3年も駿州の安倍川の水源・梅ヶ島の湯で湯治していることをいいことに、一味の若者・伊太郎といちゃついているお照だった。
(参照: 〔雨乞い〕庄右衛門の項)
20歳を幾つもすぎたお照の躰が、3年も孤閨を守れるわけはなかった。
住まいは、浅草・阿倍川の称念寺(現・台東区元浅草3丁目)の裏。そこへ、庄右衛門の軍師役の〔鷺田(さぎた)〕の半兵衛が様子を見にきた。
(参照: 〔鷺田〕の半兵衛の項)
もう、逃れるすべはなかった。
年齢・容姿:24,5歳。半兵衛老人の言葉「3年前にはまだむすめくさかった」。からだがいつも火照っている。
生国:庄右衛門と同郷なら甲州・身延近辺。駿州・下の郷近辺なら藤枝在。が、たぶん江戸近辺だろう。そうでなければ、下ノ郷から庄右衛門がお照を独りで阿部川町へ返すはずがないとみる。
探索の発端と結末:〔鷺田〕の半兵衛が訪れた夜、お照も伊太郎も半兵衛に仕置きされて床下に埋められた。その遺体を、火盗改メが掘り出して確認。
半兵衛も、謀反をおこした〔勘行(かんぎょう)〕の定七らに殺害され、隠し金を奪われた。
(参照: 〔勘行〕の定七の項)
つぶやき:30代の池波さんは、静岡市の最奥部、安倍川の水源・梅ヶ島温泉から安倍峠を越えて身延へでたとエッセイにあったので、梅ヶ島へ1泊ででかけた。
川ぞいに山あいを縫うようにさかのぼる風景は、まさに日本どこてでも見られるものだが、安倍川のようにふところの深い流域も珍しい。
梅ヶ島温泉には、池波さんのころとは異なり、民宿も何軒ができていた。朝早く、野生の猿の群れが川渡りをしているのを見た。
現地をふんだ体験から、池波さんは、〔雨乞い〕庄右衛門をここで湯治させたのであろう。作家のロケーションの使い方を見るおもいがした。
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コメント
梅ヶ島温泉を取り上げていただいてありがとうございます。
池波先生がお泊りになった梅ヶ島温泉「梅薫楼」です。
先生がいらしたのは昭和30年頃と記憶しています。
西尾氏も数年前に尋ねてくださいました。
つい嬉しくてコメントをしたためましたが、当旅館のHPもよろしかったらご覧ください。
(だいぶ前の記述へのコメントお許しください。)
http://www.baikunro.co.jp
投稿: 手塚 | 2007.04.07 19:01