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2005.11.23

〔縄ぬけ〕源七

『鬼平犯科帳』文庫巻2に入っている[密偵(いぬ)]で、下谷・金杉通りの一膳飯屋〔ぬのや〕の亭主・弥市は、かつて〔荒金(あらがね)〕の仙右衛門の配下だった盗人。
(参照: 〔荒金〕の仙右衛門の項)
鬼平の前任・堀帯刀組に捕まった弥市が、責められて〔荒金〕一味の盗人宿を吐いたことから、一味全員の逮捕につながってしまった。が、〔縄ぬけ〕の異名をもつ源七は、縄ぬけして逃走した。
弥市には見どころがあると判断した与力・佐嶋忠介は、彼を1年間入牢させておいて、その後、一膳飯屋をひらかせ、密偵に仕立てた。
ある日、偶然のように訪ねてきた〔乙坂(おつさか)〕の庄五郎は、江戸へ帰ってきている源七が、弥市の命を狙っていると教え告げた上で、合鍵の製作を強要した。
(参照: 〔乙坂〕の庄五郎の項)

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年齢・容姿:40男。まぶたがかぶさった糸のように細い眼。ほっそりした躰つきで、女のようにやわらかな声。
生国:江戸へ戻ってきた、という記述をそのままうけとると、江戸とみたい。縄ぬけの技は、東両国あたりの見世物小屋でみがいたか。

探索の発端:庄五郎から強制されて合鍵づくりに家をあける亭主・弥市に不審をいだいた女房おふくが、尾行(つ)けているのを佐嶋与力が見かけて、それで〔乙坂〕の庄五郎への見張りがはじまった。
庄五郎の合鍵づくり小屋は、山谷の玉姫稲荷の裏手の百姓家だった。
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妙亀明神社 浅茅ヶ原の向うが玉姫稲荷社
(『江戸名所図会』より 塗り絵師:西尾 忠久) 

結末:浜河岸の住吉町へ合鍵をとどけにきた弥市の前に現れたのは、〔縄ぬけ〕源七で、おどろく弥市を撲殺したのは庄五郎だった。
しかし、見張っていた鬼平らに、11名の賊全員が逮捕。死刑だろう。

つぶやき:「縄ぬけ」は、文庫巻1の[老盗の夢]で、〔蓑火(みのひ)〕の喜之助がつかっている。
(参照: 〔蓑火〕の喜之助の項)
その後、巻3の[艶婦の毒]でも、〔男鬼(おおに)〕の駒右衛門もぬける。
ただ、喜之助は一度も捕縛されたことがないのに、この最期のお盗めに齟齬をきたしたときに突然つかったのは、いささか解せない気もせぬではない。

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