〔蝋燭(ろうそく)屋〕六兵衛
『鬼平犯科帳』文庫巻10に収められている[消えた男]で、題名になっている火盗改メ・堀帯刀組から消えた元・同心高松繁太郎(当時27,8歳)に、女賊お杉を奪われ、8年間にわたって高杉を狙っていたのが〔笹熊(ささくま)〕の繁蔵(37,8歳)である。
(参照: 元同心・高松繁太郎の項)
(参照: 〔笹熊〕の勘蔵の項)
品川宿の外れで〔蝋燭(ろうそく)屋)を営んでいる六兵衛は勘蔵の叔父で、尾張から美濃へかけてずいぷんとお盗めをしたが、安永6年(1777)ごろに足を洗い、労咳病みの女を女房にし、品川へ来て店をだした。
年齢・容姿:62,3歳。無口。すっかり老け込む。
生国:遠江(とおとうみ)国(現・静岡県)のどこか。
探索の発端:8年前(天明6年 1786)〔小房(こぶさ)〕の粂八が〔野槌(のづち)〕の弥平一味にいたころ、〔野槌〕のところへいっときいた〔笹熊〕の勘蔵が、粂八に、高松の命を狙っていると打ち明けたことがあった。
(参照: 〔小房〕の粂八の項)
(参照: 〔野槌〕の弥平の項)
それをおもい出した粂八が、なにげないふりで六兵衛の店を訪ね、〔大滝(おおたき)〕のお頭から勘蔵が江戸へ戻ったと聞いたが---とカマをかけた。
(参照: 〔大滝〕の五郎蔵の項)
六兵衛は、元同心・高松が江戸へ帰ってきているとわざわざ告げに来たことを、勘蔵へ話したといった。
結末:逆に勘蔵を殺した高松は、鬼平のすすめで密偵になったが、六兵衛が雇った殺し屋に殺された。
鬼平が気づいて、〔蝋燭屋〕へ手をまわしたときにはすでに遅く、六兵衛は姿を消していた。
つぶやき:あらかじめ、六兵衛を捕縛しておかなかったことを鬼平は後悔しているが、10年も前に足をあらった者を、どういう理由をつけて逮捕できるのか。時効は、泥棒にはないのか。未詳。
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