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2006.01.06

剣客(けんかく)・石坂太四郎

『鬼平犯科帳』文庫巻6におさめられている[剣客]で、かつて試合に負けた遺恨から、同心・沢田小平次の師・松雄喜兵衛を殺害した石坂太四郎であった。
深川を見廻っていた鬼平が、小名木川南岸、霊雲院(現・東村山市富士見町5丁目へ移転)の横から出てきた浪人・石坂の袖に血がついているのを目ざとく見つけ、同心・木村忠吾に尾行(つ)けさせたが、忠吾はいとも簡単にまかれてしまう。
石坂浪人は、密偵おまさが現役(いまばたらき)だったころに助(す)けたことのある兇賊〔野見(のみ)〕の勝平一味だった。
(参照: 女密偵おまさの項)
(参照: 〔野見〕の勝平の項)

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年齢・容姿:40前後。精悍な風貌。総髪。
生国:不明。松尾喜兵衛とは、上総・天羽を領している阿部駿河守(1万6000石)の下屋敷で試合をして負けたとあるから、佐貫藩のだれかと面識があったとすると、千葉県富津市近辺の出身ともいえるかも。

探索の発端:松尾喜兵衛の葬儀を手伝っていたおまさが、家主である深川・清澄町の藍玉問屋〔大坂屋〕へ飯炊きとして引き込みにはいっている〔殿貝(とのかい)〕の市兵衛を見かけ、連絡(つなぎ)に現れた留吉を彦十が尾行、南千住の盗人宿そこにひそんでいた石坂を発見。
(参照: 〔殿貝〕の市兵衛の項)

結末:沢田小平次が扮装した松尾師匠に誘いだされた石坂太四郎は、沢田の無心の剣法に殪された。

つぶやき:盗賊の一味として、お盗めの前はすべての言行に細心慎重であるべきなのに、石坂浪人はその掟てを破り、私情を優先させてしまった。
剣術つかいの意地というか、技術自慢の者ならほとんどが陥る弊とでもいうべきか。技術を超えたところに、真の名人がいる。

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