引き込みの飯炊き・彦兵衛
『鬼平犯科帳』文庫巻15の[雲竜剣]は、シリーズでは最初の長篇なので、ゆったりと謎が解かれる。謎解きの対象の一人が、剣客医師で盗賊の頭目でもある堀本伯道という仁だが、本格派なので、仕掛けもゆったとりていて、今度の狙いの深川・佐賀町の足袋問屋〔尾張屋〕へも、3年前から、飯炊き爺・彦兵衛を入れて引き込み役をさせている。
(参照: 剣客医師・堀本伯道の項)
連絡(つなぎ)役は、近くの万年橋南詰で鰻の辻売り屋台店を出している忠八である。
(参照: 鰻の辻売り・忠八の項)
j万年橋は、手前の大川へそそぐ小名木川のとっかかりに架かっている。右は霊雲院。
(『江戸名所図会』より 塗り絵師:西尾 忠久)
年齢・容姿:50すぎか。のっそりとした大男。よくはたらく。
生国:堀本伯道の出身地の琵琶湖のほとりのどこかか、いっとき道場をかまえた武蔵国橘樹郡小杉村あたりとも推量したが、ここは大事をとって、不明ということに。
探索の発端:鬼平を尊敬しているご用聞き・仙台堀の政七が、鰻の辻売りの忠八が夜中に温かい蒲焼を〔尾張屋〕へ届けていると聞き込んできたことから、疑惑が持たれた。
それを受け取るのが彦兵衛爺とは、政七の手先・桶屋の富蔵の女房おろくが聞きだした。
結末:伯道が息子の虎太郎に斬られ、その虎太郎を鬼平が殪した。彦兵衛も忠八も捕らえられた。処分については記述がないが、死罪であろう。
(参照: 剣客盗賊・堀本虎太郎の項)
つぶやき:彦兵衛は口入屋を通して〔尾張屋〕へやとわれたという。どういう伝手で口入屋に登録したか。堀本伯道が病気を直してやった商家のだれかへ伯道が手紙で身元の保証を頼んだか。
こういう類推がかぎりなくできるところに、池波小説のおもしろみがある。
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