密偵・仁三郎
『鬼平犯科帳』文庫巻18に収録の[一寸の虫]は、本格派の〔船影(ふなかげ)〕の忠兵衛(52歳)の配下で、いまは火盗改メの密偵になつている仁三郎が、かつての同僚で血なまぐさい盗めをする盗人〔鹿谷(しかだに)〕の伴助(中年男)に誘われて、忠兵衛の娘(24歳)が嫁いでいる菓子舗へ押し込むが、その直後に伴助を刺殺し、自らも自裁する物語である。
(参照: 〔船影(ふなかげ)〕の忠兵衛 の項)
(参照: 〔鹿谷〕の伴助の項)
密偵としての初登場は、文庫巻15[雲竜剣] 。藤代へ出張る与力・小林金弥や小柳安五郎の供としてである。しかし、このときには、密偵となった経緯は説明されない。
年齢・容姿:40がらみ。細身で背丈が高く、頬骨の張った皺の深い顔。
生国:この道の最初の首領が〔船影〕なので、同郷とみて信濃(長野県)のどこか。
密偵となった経緯:[一寸の虫]にいたって初めて、〔不動(ふどう)]の勘右衛門の一味にいたとき逮捕され、「見どころがある」と鬼平に認められて密偵として働くことになった。〔不動〕一味の事件についての記述はないから、それが何年前のことかは不明。
しかし、先掲の[雲竜剣]では早くも「腕きき」と評されている。[雲竜剣]は寛政8年(1796)の事件と推定できるから、その1年ほど前の逮捕劇だったか。
つぶやき:タイトルの由来は、「一寸の虫にも五分の魂」からきていることは贅言するまでもないが、それが、かつて〔船影]の忠兵衛に勘当された〔鹿谷]の伴助の恨みを指しているのか、密偵(いぬ)に身を落としても忠兵衛から受けた恩は忘れない仁三郎の心根をいっているのか。
読み手としては、後者をとりたい。
仁三郎の葬儀は、古参密偵の〔小房(こぶさ)〕の粂八がすべて取り仕切った。
(参照: 〔小房〕の粂八の項)
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