釣具〔利根(とね)屋〕八蔵
『鬼平犯科帳』文庫巻14に収められ、[尻毛の長右衛門]と、この篇のタイトルにもなっている首領の〔尻毛(しりげ)〕の長右衛門は、もともとは美濃国(岐阜市)の尻毛(しっけ)の出身である。
(参考: 〔尻毛〕の長右衛門の項)
江戸でのお盗めのときの宿泊は、3つある〔盗人宿のうちの、小名木川が大川にそそぎこむ川口、そこに架かっている万年橋の南詰の釣具屋、〔利根(とね)屋〕八蔵方としている。
左端が万年橋(。南詰は橋の右手
(『江戸名所図会 霊雲院』より 塗り絵師:西尾 忠久)
つまり、〔利根屋〕八蔵は〔尻毛〕の長右衛門の配下の一人ということ。
年齢・容姿:60がらみ。矍鑠として諸事をこなす。
生国:下総(しもうさ)国望陀郡(まくたぜのこおり)利根(とね)村(現・千葉県君津市利根)。
10年前にいまのところで店を開き、土地の評判もよく、釣り舟も一艘持っており、客を乗せて川や海へも出るのは、若いころに利根で船頭をしていたからである。
探索の発端:長右衛門が、妾だったお新のむすめ・おすみ(19歳)を、本所・吉田町2丁目の薬種問屋〔橋本屋〕へ引き込みに入れていたのを、お新そっくりなのに、密偵おまさが目をつけた。
(参照: 引き込み女おすみの項)
(参照: 女賊お新の項)
(参照: 密偵おまさの項)
結末:八蔵の舟でずらかろうとした長右衛門は捕縛。八蔵も同然。
(参照: 女賊お新の項)。
つぶやき:八蔵の生国を房総の利根にして、操船もできるとしたところにも、池波さんの細心の配慮が及んでいる。
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コメント
尻毛のお頭の出身が岐阜の伊自良川下流、
女房が若い頃は駿府の廓にいたので、八蔵もそちら方面の出身かと思ってました。
江戸時代には舟が重要な交通手段だったので、
操船できる人はおつとめには不可欠だったのですね。
投稿: みやこのお豊 | 2006.03.13 23:57
再考の余地があるかも。
投稿: ちゅうすけ | 2006.03.14 19:11