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2007.07.19

女密偵おまさの手紙

【つぶやき】
〔荒神(こうじん)〕の助太郎銕三郎(てつさぶろう のちの平蔵宣以)を、東海道の三島宿でからませた。

文庫巻24、未完の[誘拐]の顛末をも、自分なりに空想してみたかったためである。
文庫巻23[炎の色]のヒロインの一人---〔荒神(こうじん)〕のお夏、[誘拐]にはまだ姿を見せていないが、おまさは、彼女の出現を予感している。
 ---〔荒神〕のお夏←Who' s Who
25歳でレスビアンのおが、10歳以上も歳上のおまさに魅力をかんじていること、[炎の色]では愛し合えなかった不満を遂げたいとおもっていることを、おまさは承知しているからである。

おまさも、おに触れられて、これまでにない性的刺激を受けている。
この2人の関係の顛末は、鬼平ファンならずとも、興味をそそられる。想像をたくましくしてみたくなる。

 ---密偵おまさのWho' s Who
     ↓
   [女密偵おまさ] (2005年3月3日)
   [女密偵おまさの年譜]
(2006年1月1日) 
   [密偵おまさが事件の発端] (2005年3月3日?)
   [テレビ化で生まれておまさと密偵](2005年3月3日?)
   
さて、[炎の色]。湯島天神の境内で〔峰山(みねやま)〕初蔵お頭に声をかけられたことから、おまさと〔荒神〕のおとの縁(えにし)が始まるのだが、そのことはおいて、おばあさんの〔笹や〕に寄宿しているといってしまったため、転がり込むおまさ。

おまさが〔笹や〕へ入って行き、
「お熊さん。たのみますよ」
いうや、お熊は万事心得て、奥の方へ顎をしゃくった。

このあたりの、2人の阿吽(あうん)の呼吸には、老獪な〔峰山〕の初蔵もみごとに騙されれるのだが、それも、いまはどうでもいい。

おまさは、奥へ入り簡単な手紙をしたためる。

したためたのはことの経緯で、その手紙で鬼平へ知らせる。
手紙を役宅へ運んだのは、〔笹や〕の真ん前の弥勒寺の小僧である。

おまさは、少女時代から、すでに母親がいない。父親〔鶴(たずがね)〕忠助の店を手伝っていたので、手習い所へ通いそこねた。
口は達者でも、字はひらがなしか書けない。

おまさは、文庫巻12[密偵たちの宴]の終末で、みごとな啖呵(たんか)をきって、 〔大滝(おおたき)〕五郎蔵ほかのレギュラー密偵たちを辟易(へきえき)させる。

しかし、手紙といえば、巻4、おまさ初登場の[血闘]では、独り住まいをしていた下谷の坂本裏町の与助長屋の畳の下に、

(しぶ江村、西こう寺うらのばけものやしき)

と書き残したぐらいか。

Photo_405
(おまさのが独り住まいしていた日光街道ぞい、坂本裏町)

幾人もの大物のお頭に信用されて、その盗(おつと)めのための引き込みをやっていても、連絡(つなぎ)は、手紙でなく、口頭だったのだろうと類推する。

ところが、[炎の色]では、鬼平あての手紙を書いている。
手紙の文面は示されない。
池波さんも、ついうっかりして、おまさに手紙を書かしてしまったのであろう。

だから、巻24[誘拐]でも、誘拐されたおまさからの連絡(つなぎ)の文は、あまり期待しないほうがいいかも。

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