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2009.07.10

7月の[鬼平クラス]リポート

2009年7月5日の静岡SBS学苑の[鬼平クラス]のテキストは、文庫巻10[むかしなじみ

SBS学苑の主体は、静岡新聞社と静岡放送である。
鬼平クラス]は5年ほど前に開講し、月1で、ふつうは第1日曜の午後1時から1時間半ゆっくりとレクチャー、それからビデオを鑑賞。
年に2回ほど、ウォーキングと称して、東京やそのほかの鬼平ゆかりの地、県内の地をめぐる。
なにしろ、長谷川家の祖で、史料がのこっているのは、焼津市の小川(こがわ)や藤枝市の田中城なのである。

さて、[むかしなじみ]は、1973年の『オール讀物』8月号に掲載された、〔相模さがみ)〕の彦十爺(とっ)つぁんが主役のものがたり。

彦十爺(とっ)つぁんといえば、われわれはとっさに、江戸屋猫八師匠の、あの飄々とした人物を連想する。
しかし、猫八師匠の彦十役は、吉右衛門丈=鬼平からで、原作が書かれていた1973年---幸四郎丈=鬼平がおわって2年後--池波さんが承知していたテレビの彦十役は、河村憲一郎さんであった。

つぎの丹波哲郎さん=鬼平のときの彦十役は、岡田映一さん。
萬屋錦之介さん=鬼平のときが、植木 等さんとのちに西村 晃さん。

いっぽう、彦十が登場した篇を書きだしてみると、

1-2 本所・桜屋敷 p65 新装版p69
1-8 むかしの女 p277 新装版p93
2-6 お雪の乳房 p255  新装版p266
3-1 麻布ねずみ坂 p20 新装版p21
4-6 おみね徳次郎 p227 新装版p238
4-8 夜鷹殺し p278 新装版p292

---と、[夜鷹殺し]で、平蔵に対して初めて、一人前の口をたたく。

「近ごろ、こんなに腹が立つことたあ、ごぜえやせんよ。ねえ、旦那。夜鷹も将軍さまも---」
白髪(しらが)まじりのあたまを振りたてていいかけるのへ、平蔵すかさず、
「同じ人間だからな」
「さすがに銕つぁんの旦那だ」

つぁんではなく、その下にまだ「旦那」がくっついていた。

5-1 深川千鳥橋 p23 新装版p24
5-2 乞食坊主 p71 新装版p74
5-3 女賊 p99 新装版p104
5-4 おしゃべり源八 p143 新装版p150

と、ところを得た魚のように、のべつ、出番をあたえられている。

どうしていこうなったか?
大本は、幸四郎丈=鬼平のテレビ化の実現をすすめた、プロデューサー・故・市川久夫さんの助言だとおもう。
市川さんに、あるとき、
「テレビのシリーズには、柱となるヒロインが必要と、おっしゃって、おまさを登場させたのは、あなたでしよう?」
と問いかけ、
「ご名察のとおり」
と答えられた。

その伝でいくと、テレビのシリーズ化には、狂言まわしのコメディ・リリーフが、木村忠吾ひとりではもたない---とも提言されたのではなかろうか。
で、急遽、彦十爺っあんの狂言まわし化がはかられた。

さらに、

4-1 霧の七郎で、辰蔵
5-2 乞食坊主で、井関録之助http://onihei.cocolog-nifty.com/edo/2008/08/post_3904.html
5-6 山吹屋お勝で、三沢仙右衛門
6-5 大川の隠居で、船頭の友五郎
7-6 寒月六間堀で、茶店〔笹や〕のお熊(くま)、
10-3 追跡で、辰蔵の遊び友人・阿部弥太郎
11-3 で、〔帯川おびかわ)〕の源助
18-1 俄か雨 細川峰太郎

また、テレビでは、料理通という設定で、同心・村松忠之進(この仁は、1-2 本所・桜屋敷に、与力として名があがっている p80 新装版p85)

その中でも、彦十は、鬼平銕三郎時代のつなぎ役として、おまさ、おとともに、重い地保をたもちながら、おかしみをかもしだしているのである。

テレビでの[むかしなじみ]は、幸四郎丈のときと、錦之助さん、吉右衛門丈の3回制作されているが、奇妙なのは、前者の脚本家は野上龍雄さん、錦之介さんと吉右衛門丈の撮影は野波静雄さんの脚本ですすめられている。

クラスでは、吉右衛門丈のビデオをかけたが、幸四郎丈の物語の組み立てと、彦十の性格づくりも見てみたいものである。


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コメント

このように彦十さんを解説していただと、登場人物に厚みと興味が増し、物語の読み方も変わってきます。
それにしても、[鬼平クラス]というのは、すばらしいお話が受けられるクラスなんですね。うらやましい。

投稿: tomo | 2009.07.11 05:12

「鬼平クラス」機会があれば、聴講したい
クラスです。

投稿: おっぺ | 2009.07.13 00:36

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