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2011.05.13

本陣・〔中尾〕の若女将お三津(6)

まだ眠っているお三津(みつ 22歳)から離れるとき、ふとんをもちあげると寝衣から乳房がはだけていた。
ややにふくませたことのない桃色の乳頭は小さかった。

吸うとお目ざを求めるにきまっているから、そのまま静かに身づくろいをし、本陣の裏庭から入り、素振りを500回こなした。

朝食をすましたところへ、〔扇屋〕の万次郎(まんじろう 51歳)元締が辰次(たつじ 60歳)を伴い、案内されてきた。

「火盗改メ方の衆は---?」
「きのうの朝、発(た)ちました」
「ご用済みでしたか」

万次郎がいうには、きのうの夕刻、神座村の爺ぃがやってき、お(てつ 25歳)一行を荷運び舟で対岸へ渡したことを白状してしまったから、お咎めがありそうと心配していたと。

「そのことでしたら、爺(と)っつぁんのおもいすごしです。おの本名がおまさということを確かめただけです。おまさは、われの妹分のようなおなごです」

安堵した万次郎が、あすのお発ちのとき、藤枝まで伴をしたいと頼んだ。

「藤枝の元締に、[化粧(けわい)指南読みうり]をいっしょに板行しないかともちかけてみたいのですよ」
「藤枝がのってきたら、掛川の元締にも話をとおし、お披露目枠の権利だけそれぞれがお遣いになればよろしい。江戸へ帰ったら、〔音羽(おとわ)〕の元締から、ご子息へ知恵をつけてもらいましょう」

明朝発ちは六ッ半(午前7時)を約したところで、松造(よしぞう 31歳)が、
「きのう、宿場の主だった旅籠と本陣に、江戸の火盗改メ方が宿泊していないかと訊いてまわっていたのがいたそうです」
道中師の〔野川(がわ)〕の潤平(じゅんぺえ 50すぎ)が執念で追いついたらしい。

不審顔の万次郎に、4日前の府中での一件を説明してきかせると、
「おまかせください」
「命にかかわるようなことだけはしないでほしい」
「承知でやす」

去りぎわに、大井大明神の新しいお守りを、松造の分も渡し、平蔵(へいぞう 37歳)の10年前のを引き取っていった。
「一の鳥居料をご寄進をいただいておると告げたら、禰宜(ねぎ)が神殿に供え、念入な祝詞((のりと)をおげてから下げてくれました」

昼餉(ひるげ)の膳につきそってきたお三津は、松造が小用に立つと、
「長火鉢の立派な蓋ができました。どんなふうに使うか、おもってみただけでも、胸がさわぎ、下腹の芯が熱くなってきてしまいます。八ッ(午後2時)が待ちどうしい」
首に血の気をみなぎらせていた。

「昼間だから、行灯でなく、お天道さまの明かりで鏡に映せる」
「もう、みだら」
しばらく、動けなくなっていた。


訪れると、寝衣に着替え、髷をほどき、たらしていた。
「察しがいいな」

襖も片寄せ、裏庭からの陽光で、行灯よりも明るかった。、
「蓋に下布団をのせる」

「お酒(ささ)は---?」
「五ッ(午後8時)前にはおなごは抱かないという禁則を破るのだから、とうぜん、六ッ(午後6時)までは呑まないという自戒にも目をつむる」
「はい」

しばらく、他愛もないやりとりを楽しんだあと、平蔵が寝衣に手をとおした。
「表の戸締まりは大丈夫か?」
「頭痛がするので、寝(やす)むから、誰もよこすなといっておきました」
「鏡は---?」
「2ヶ。1ヶは自分のみだらな顔をときど映してみたい」
「では、そこに腰をかけ、頭を庭のほうへ、仰向けに寝る。箱枕をあてがってやろう。そのほうが鏡が見やすかろう」

寝たおんなの腰の両側に手をかけ、尻が2寸(6cm)ほど蓋から宙に浮くようにずらした。

膝を曲げて開かせ、鏡に映すと、
「なんだか、そこが宙にただよっているみたいで、初めての感触---」

ちゅうすけの詫び言】たしか、『医心方 房内篇』に、この体位があったはずとコピーを探したが、先日の地震で書棚が倒壊し、書籍と資料が散乱したままで、発掘できない。
あとはご想像いただきたい。
低いところから衝きあげるので、いつもにもました悦楽にひたれると記してあったやに記憶してはいるのだが。

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079銕三郎・平蔵とおんなたち」カテゴリの記事

コメント

そういえば、去年の12月下旬ごろでしたか、多紀(たき)元簡(もとやす)と平蔵のあいだで、医学館秘蔵の『医心方 房内篇』が話題になったことがありました。
なにげなく、読み飛ばしていましたが、こんなところで復活してくるとは、おもいもかけませんでした。
このブログ、延々とつづきながら、それぞれが関連しあっているのですね。
つなげているのは、平蔵と盗賊の筋と、平蔵とおんなの筋。おまさ、お竜、お勝、お富、千浪、お信の線では、両者がたくみにあわさっています。
そしていまは、里貴が平蔵を幕府とつなげています。おんな模様『犯科帳』ですな。

投稿: 文くばりの丈太 | 2011.05.13 05:01

>文くばりの丈太 さん
「おんな模様『犯科帳』」かあ。
うまいこと、名づけていただきました。
ありがとうございます。

静岡の「鬼平クラス」は、約3割が女性メンバーです。
女性にも、鬼平は人気があります。

投稿: ちゅうすけ | 2011.05.15 09:23

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