本陣・〔中尾〕の若女将お三津(4)
「若後家どの。引きかえすなら、ここからだが---」
耳元へ息を吹きこむようにささやいた。
平蔵(へいぞう 37歳)のものに触れていたお三津(みつ 22歳)が、
「引き返すなんて、できない」
湯から2人は、そのまま布団に伏していた。
「われには、内室と子が4人、ほかに割りないことになっているおなごがいる」
「だから、引き返せ? ここが、進め、すすめって---」
「だから、進んでいいかと、確かめておる」
「いいにきまってます」
「あと、1ト晩か2晩だぞ」
上にまたがったお三津が、おもいどおりに導き、腰をゆすってきた。
若後家のしおらしさの芝居っ気などとっくにかなぐりすてた、熟;れきる齢ごろの女躰の求めぶりであった。
終り、
「なぜ、こんなことになった---?」
「平さんが、今朝、裸の上半身をお見せたからです。棒を振り回すたびに、腕や肩の肉がぴくびく動のくのに、私も感じてしまって---」
「強(こわ)もての若女将との評判をとっているのに---」
「これからも、世評どおりです」
「鎮めてほしくなったら、江戸へくだります」
「江戸は遠いぞ」
「かまいません---10日や20日」
(与板の廻船問屋〔備前屋〕の後家・佐千(さち 34歳=当時)も、こらえきれなくなったら、江戸表へでてくるとかいっていたが、閨房でのそのときのおんなの躰がいわせている科白かもしれない)
【参照】2011年3月20日[与板への旅] (16)
「不思議だな」
「なにが---です」
「お三津どのほどのいいおんなぶりのこの躰をあきらめた、ご亭主どののことよ」
「いい躰---?」
「敏感だし、しめつけるし、潤いもこんこん---」
「平さんだからです。認めてくださって、天にものぼるほど、うれしい」
「耕せば---」
「耕して---」
口をしめらせたい、という平蔵のために、お三津は裸のまま、酒と水をとりに立ったが、その仕草は自信にみち、うきうきしていた。
22歳という若さの強みであり、悦楽のとば口に立っているおんなの欲求のはげしさでもあった。
座りこんで酒を傾けてる平蔵の横に寝ると、
「もっと、いってください」
乳首に触れ、
「小さいが、すぐに反応し、堅くなる」
「はい、求めてる」
下腹に這わせ、
「熱くなっている」
「もっとみだらになって、いいおんなぶれ」
「みだら、って---?」
「ここへきて、大股をひらけ」
「こう、ですか。あ、平さんの目つき、みだら---」
「そう、大みだら---だ」
「うれしい。こんな、みだら、初めて---」
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コメント
平蔵さん、いきなり「みだらになれ」
22歳の出戻り若女将は、その気になり、大股をひろげて、さらす。
女には、好きな人には、みだらしてみたいという気持ちが隠れています。
それを、ひと言、「みだらになれ」と切りだされると、羞恥心をかなぐり捨てて演じてしまう。
すごいシーンです。
投稿: tomo | 2011.05.10 06:13
>tomo さん
お認めいただき、ありがとうございます。
「みだら」と「ふしだら」は異なります。
「淫ら」は閨房で2人だけで行う興奮剤的な演技でしょう。
「ふしだら」は、反社会的な不行儀でしょう、
投稿: ちゅうすけ | 2011.05.10 07:24