平蔵、書状を認めた(6)
小夜(さよ 22歳)が、午後の出事(でごと 男とおんなの交合)の手習いは、師匠のほうが楽しませてもらう番と告げていた経緯(くさぐさ)は、記すのもはばかられる。
真新しい櫓(やぐら)炬燵を2基とりだし、その上に春先から秋口までの長火鉢用の蓋といって作らせた1畳分に近い止め縁枠つき台板をのせ、敷布団を敷いたこと、手鏡を2枚用意していたと打ちあければ、1ヶ月ほど前にアップしたコンテンツだから、内容はお察しいただけようか。
櫓炬燵は、平蔵からの文を受けるとすぐに、つくりの頑丈さを、店の者に上で足踏みさせてたしかめ、届けさせた。
ま、復習として、
【参照】2011年5月12日~[本陣・〔中尾〕の若女将お三津] (5) (6) (7)
2011年5月21日[[化粧(けわい)読みうり]西駿河板] (3)
小夜と名のっているおんなは、すでに昼風呂をすませ、結髪をといて洗い髪を長くたらしていた。
「結(ゆい)くずれを気にすることもなく、みだらがやれるから---」
みだら---と聞き、辰蔵(たつぞう 13歳)がたじろぐこともあるまいとふんでいるようであった。
辰蔵にも風呂をすすめ、口をよくすすぐようにと、新しい房楊枝(ふさようじ)をわたした。
口の吸いあいに舌を深くからませあい、表裏を刺激しあうことは、昨晩のうちに習得していた。
双方の唾液がまざりあううちに、とりわけおんなの気が昂まることも知らされた。
(道理で、丹而(にじ 12歳)が「ううっ---父上---怖い」,とうめいたわけだ)
【参照】2011年6月11日[辰蔵の射術] (8)
舌使いの強弱、緩急も、口と乳首、脇の下、太股で違えることも会得したつもりであったが、昨夜は薄暗がりの中、芝生を鼻の頭に感じながら、辰蔵のほうが興奮してしまった。
この日は真っ昼間であった。
目を凝らして手鏡に写されている部位のほうに看(み)いっていた。
下の唇を中指でとんとんと軽く叩け、指でひらいたとこへ巨立している太棒をあてよ、と命じられ、おもわず挿入しそうになり、
「まだまだ。ちゃんと写して」
叱られたが、躰の置き方に苦心した。
「それではよく見えない。みだらが湧きしたたっているでしょう、それが光るように見せて」
片手で手鏡の向きをさぐり、もう一方の指で下唇を引き、玉水が亀頭を濡らすようにするのだから、額に汗をかいた。
(睦みも、みだらという段階になると、快楽よりも努力だな)
辰蔵の戸惑いにも同情する。
弓でも[手の内]という用語を口にする。
射法の型の中に秘められている勘どころのことである。
性技にもそれがあるのであろうが、昨夜覚えたこととは、要求があまりにも高度すぎた。
昨夜のを序(じょ)の口とすると、今日の午後のは有段者の技であろう。
どんな技にも奥の奥があることは、辰蔵もこころえていた。
しかし、小夜の要求は一足とびであった。
当惑していたとき、
「来て---」
師匠からお許しがでた。
jま、冗談めかしていうと、これこそ、父子相伝の秘技であろうか。
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