奈々(なな)と月魄(つきしろ)
「月魄(つきしろ) のこと、気にいったらしいな」
月魄を三ノ橋通りの屋敷の厩舎へ戻し、出ようすると、月魄(つきしろ)が落ち着かなくなった。
首をたたいてやりながら、
「奈々には、また会わせてやる。奈々もおぬしのこと、好きらしい」
家の者たちの耳に入らないように、ゆっくりした低い口調で2度、3度ささやくと、落ち着いた。
そうしてから、奈々(なな 18歳)の家へ引き返してきたのであった。
腰丈の桜色の閨衣(ねやい)で、独り酒をしていた。
「うちが月魄のおちんちんを舐めたよって、怒ってしまったとおもったん」
「月魄を,寝舎へ入れてきた。奈々の傍(そば)へきたがっていたが、また今度と---ようやく納得させた」
「お利口さんの月魄。奈々も負けんと賢くならんと、蔵(くら)さんに棄てられる」
里貴(りき 逝年40歳)が銕(てつ)さま、ときに平(へい)さまと呼んでいたのをはばかり、蔵さんにしていた。
立てていた右膝をおろし、太腿をひらいた。
閨(ねや)へ移ろうという合図であった。
月輪尼(がちりんに)が法衣の下に男ものの下帯をつけて乗っていると話すと、
「鞍をつけへん裸の月魄の脊に、野袴も下帯もなしでまたがってみたい」
奈々がとんでもないことをいいだした。
【参照】2011年9月25日[駿馬・月魄(つきしろ)] (1)
内股に触れ、
「ここから月魄を感じ、肌と肌で会話を交わすのはいいとして、駆足になると、風で裾がめれてここもお尻も人目にさらすことになるぞ」
「そこは考えてる。膝丈の上着に、どでかい風呂敷のような布で腰から下を覆うの」
「その布の臍の下にあたるあたりを、下方から半分ほど割(さ)いておかないと風でめくりかえる」
「後ろは布の重ね目が開くよって、月魄の脊なりに割れ、お尻丸見えにはならへん」
他愛もない会話をつづけているうちに、奈々が足を股ぐらへさしこんできた。
(どうも、本気でそうしたがっているようだ。尼どのも月魄の賢さをほめてはいるが、奈々のは、情をかよわせあう仲だ)
「蔵さんの茂み、月魄の背中の毛並みみたい」
絹糸がかすかにしか生えていない柔らかな丘部をすりつけてきた。
(われを馬並みにおもっている!)
その無邪気ぶりが、年甲斐もなく可愛いかった
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