別刷り『剛、もっと剛(つよ)く』(3)
(別刷『剛(ごう)、(
ひらめいた平蔵(へいぞう 40歳)が、明日の夕刻に茶寮〔季四〕に、〔音羽(おとわ)〕一帯の香具師(やし)の元締・重右衛門(じゅうえもん 58歳)と町駕籠〔箱根屋〕の亭主・権七(ごんしち 53歳)に寄ってもらおうと考えていたころ---。
権七は妾の一人で船宿〔黒舟〕枝店の女将・お艶(えん 35歳)とそれぞれに独酌しながら、互いに『剛(ごう)、(
目次---
玉棒の巧みな使い方
思わず「死ぬ」と口走らさせる法
互いに歓喜に達する交わり方
前戯のあれこれ
女性の快感の徴候の看察
権七は、ここでその丁(見開き2ページ)をひらき、『玉房秘決』によるとふられた本文を読みはじめた。
[おんながどのような快感の段階にい、こちらはどうすべきかを察するためのおんなの徴候]の、5つが刷られていた。
1.頬に朱がさしてきたら、こちらり玉棒を玉門の入口にあわせます。
2.乳頭が硬くなり、鼻の頭に汗がにじんできたたら、玉門の入口からゆっくりと亀頭だけ入れます。
3.喉を乾かして唾を嚥下したら、入れたところまでの亀頭を出し入れしたり、玉門をたたきます。
ちらりとお艶をうかがうと、向こうも潤んだ視線を向けてき、
「旦那。〔性力をもっと剛(つよ)くする漢方〕をみなよ」
いわれた権七が、お艶がひらいている紙面をのぞくと、
「射精したいときは、かならず、おんなのほうの快感が極jまっていることをたしかめること。
おんなが頂点に達すると同時に射精する。
おんながまだ達していなかったら、浅く引く。
玉棒の深い・浅いは赤ん坊が乳首をくわえているように、ときに浅く、ときに深く。
また、いちど抜いて口を吸い、歯で噛み、玉核を舌でもてあそんで快感を昂めてからふたたび挑むのもよい」
「そこじゃない。その先---」
顔に険(けん)がさしていた。
このごろ、権七の玉棒が以前のように硬直しないことが多くなった。
挿してくるときはそこそこなのだか、つづかない。
お艶の中でよろけてしまうのだ。
(清長 お艶のイメージ)
経年がすすむとともに男はそうしたものだとは聴いていたが、筋肉の塊りのような権七がそうなるとはおもってもみなかった。
「そこに書いてある牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)でも、多岐(安長元簡 もとやす 31歳)若先生に相談をかけてみたら---」
権七も、お艶が満足しきっていないことはうすうす気づいていたが、男の沽券(こけん)にかかわると、わざと口にしないようにしてきた。
もう一軒の船宿〔黒舟〕根店をまかせているお琴(きん 41歳)は、あきらめているのか、不満はこぼしはしていない。
【参照】2011年12月6日~[化粧(けわい)読みうり〕の別刷り ] (1) (2) (3)
権七とお艶の仲 2010年11月17日[〔黒舟〕の女将・お艶(えん)
]
【ちゅうすけ注】『医心方』ついては槇 佐知子さん訳の筑摩書房版を参考にさせていただきました。
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コメント
平蔵の町方の無二の親友でありこころ強い後ろ支えでもある権七とのあいだがらも丸22年もつづいているのですね。
それというのも、箱根の湯で18歳の銕三郎が昼飯をおごったのが相互信頼のきっかけと記憶しています。
鬼平には登場していないちゅうすけキャラですが、鮮烈です。
投稿: 文くばりの丈太 | 2011.12.25 16:24
>文くばりの丈太 さん
いつも暖かいコメント、ありがとうございます。癒されます。
権七とは、ちゅうすけも5年ほどのつきあいになります。彼が顔をみせると、ホッとします。もっとも戦前の日本人らしいキャラだとおもいます。
いつか、彼を知っていただくためのリンク集をつくらねばと、文くばりさんのコメントで決心させられました。
かさねがさね、ありがとうございます。
投稿: ちゅうすけ | 2011.12.25 19:07