〔関本(せきもと)〕の源七
『鬼平犯科帳』文庫巻16に収録されている[火つけ船頭]で、南伝馬町の畳表問屋[近江屋〕を襲ったが、たまたまその夜、〔加賀や〕の船頭・常吉が裏塀に放火。火の番が燃えている板塀を発見して騒ぎたて、町火消しがかけつけて消火にあたたったが、その騒ぎで〔関本〕一味は盗みをあきらめて逃走する。
(参照: 船頭・常吉の項)
船頭・常吉のむ放火癖は、黒江町の同じ裏長屋に住んでいる浪人・西村虎次郎と女房おときの不倫を目にしたことから始まった。
(参照: 浪人盗賊・西村虎次郎の項)
西村虎次郎を〔関本〕の源七へ引き合わせたのは、口合人〔塚原(つかはら)〕の元右衛門である。
(参照: 〔塚原〕の元右衛門の項)
年齢・容姿:どちら記載されていない。
生国:常陸(ひたち)国真壁郡(まかべこうり)関本(現・茨城県筑西市関本)
*=関本肥土(あくと)、関本上(かみ)、関本上中(かみなか)、関本下(しも)、関本中(なか)、関本分中(わけなか)。
『旧高旧領』には、常陸国多賀郡(たがこうり)関本(現・茨城県北茨城市関本町*)もあり、捨てがたいが、〔関本〕一味の本拠・草加宿からはいささが離れすぎていると判断。
こちらの*=関本町小川、同才丸(さいまる)、同関本上(かみ)、同関本中、同八反(はったん)、同福田、同富士ヶ丘。
探索の発端:〔塚原〕の元右衛門の項から再録。深川・黒江町の裏長屋を見張っていた密偵〔大滝(おおたき)〕の五郎蔵が、浪人・西村虎次郎のもとを訪ねてきた顔見知りの口会人〔塚原(つかはら)〕の元右衛門を見かけたので、おまさと彦十が尾行して、橋場の真崎稲荷裏の隠れ家をつきとめ、ひとりばたらきの盗人たちの所在がつぎからつぎへと明らかになっていった。
(参照: 〔大滝〕の五郎蔵の項)
(参照: 女密偵おまさの項)
と同時に、〔関本〕の源七が隠れ蓑にしている草加宿の旅籠〔吉田屋〕もあきらかになった。
結末:草加宿の旅籠のほか、2カ所の盗人宿で、一味全員がお縄となった。死罪。
つぶやき:火盗改メの任務には放火犯の検挙もあるが、現行犯でないかぎり、探索がきわめて困難らしい。
明和9年(1772)に、行人坂の大円寺から出火して江戸の半分を焼失する大火となった、いわゆる「行人坂の大火」の放火犯の逮捕は、鬼平の父・長谷川宣雄が火盗改メに就いていたときの大手柄である。
検挙のきっかけは、高位の僧衣をきている若造のかかとがひび割れていたのを不審におもって逮捕してみたら、大円寺放火の犯人であった。
この功で宣雄は、京都西町奉行へ栄転したといわれている。
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コメント
深川、黒江町は歩きにくいところだと思います。 むかしの密偵の尾行は大変だったでしょう。
NHK放送の御宿かわせみ「雨月」の舞台でもありますので早速歩いて宿題を果たしたいと考えています。
「鬼平犯科帳の世界」にも掲示板を作りました。
投稿: edoaruki | 2005.06.10 10:26
edoarukiさん
黒江町を歩きますか。
黒江町といっても、6か所ありますから、常吉の裏長屋をとことみるかですね。
陽岳寺の前の現在の三角地帯とみるか、高速道路下の富岡橋の親柱が残っているあたりとみるか、そのまた南とみるか。
歩いてみて感じたことを、また教えてください。
投稿: ちゅうすけ | 2005.06.10 17:45