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2005.10.06

船頭(せんどう)・常吉

『鬼平犯科帳』文庫巻16に収められている[火つけ船頭]の主人公・常吉は、思案橋たもとの船宿〔加賀や〕の船頭である。それが、〔火つけ船頭〕というタイトルをつけられたのは、おととし所帯をもった女房おときを、同じ長屋住まいをしている浪人・西村虎次郎(30がらみ)に寝取られた鬱憤ばらしに放火をしているからである。
(参照: 浪人盗賊・西村虎次郎の項)
1回目は、夏の初めに日本橋・室町1丁目の乾物問屋〔伊勢屋〕だった。このときは3人焼け死んだ。
つぎは、浅草の御蔵前片町の足袋股引問屋〔尾張屋〕であった。どちらの主人も、〔加賀や〕の客としてきて舟を出させ、船頭の常吉を馬鹿呼ばわりした。
3度目は、南伝馬町の畳表問屋〔近江屋〕をやるつもりだったが、盗賊と鉢合わせ。しかも、その賊の中に、女房おときを寝取った西村虎次郎がいたのである。

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年齢・容姿:29歳。色白の餅肌で小肥り。丸い顔の中に目も鼻も口もちんまりとおさまっている。
生国:江戸・下谷の金杉(現・東京都台東区下谷2丁目あたり)。

探索の発端:畳表問屋〔近江屋〕の塀に火をつけたとき、押しいろうとしていた〔関本(せきもと)〕の源七一味の中に西村虎次郎の声を聞きつけた常吉が、火盗改メに投げ文をしたためた。虎次郎に監視がつき、辻斬りをしようとしたところを、鬼平が逮捕した。
(参照: 〔関本〕の源七の項)
西村虎次郎を〔関本〕の源七へ口合いした口合人の〔塚原(つかはら)〕の元右衛門にも尾行がつき、何人かの一人ばたらきが捕縛された。
(参照: 〔塚原〕の元右衛門の項)

結末:〔関本〕の源七の一味も西村虎右衛門も死罪。おときは遠島。常吉は定法どおり火刑。
〔塚原〕の元右衛門の処分は書かれていない。

つぶやき:池波さんに、無謀にもじかに質問したことがある。「長谷川平蔵の職責は、火付盗賊改メですから、火付も対象ですよね。でも、『鬼平犯科帳』には、火付の篇が意外に少ないのは、どうしてですか?」
池波さんの答え「ぼくは火事がきらいでね。火事の描写ってむずかしいんだよ」

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