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2006.02.19

〔丸太橋(まるたばし)〕の与平次

『鬼平犯科帳』文庫巻1に収められている[暗剣白梅香]の主人公、仕掛人にまで身を落としている金子半四郎に、本石町3丁目の蝋問屋〔葭屋(よしや)〕の婿・宗太郎の殺害を100両で依頼したのは、深川一帯の暗黒街を取り仕切っている〔丸太橋(まるたばし)〕の与平次であった。
(参照: 仕掛人・金子半四郎の項)
与平次は、200両でこの仕掛けを引き受けている。そのことも、〔起(おこ)りが婿の行状に手をやいていた〔葭屋〕の当主・専右衛門であることも、半四郎には関係ないことである。

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年齢・容姿:どちらの記述もない。推察するに、60すぎ、小柄で善良そうな、笑顔をたやさない好々爺然とした仁であろう。そうでないと、〔葭屋〕専右衛門のような大店(おおだな)の主(あるじ)が信頼して頼むはずがない。
生国:武蔵(むさし)国江戸の深川、仙台堀支川に架かる丸太橋ぎわの顔役の家(現・江東区福住あたり)。

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近江屋板・深川(部分)。左手に丸太橋

仕掛けの顛末:女道楽がはげしいといっても、吉原ほかの遊興のちまたへ出入りするのだから、金づかいも自然に荒くなる。、〔葭屋〕専右衛門としては、200両費やしても、宗太郎の今後の遊興費をかんがえると、安いといえるかもしれない。
ある夜、吉原へ向う宗太郎の駕篭を、日本堤土手からちょっと入谷田圃の農道へそらせ、駕篭かき2人ももろともに惨殺してのけた。

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不夜城といわれた新吉原の夕景。周囲は入谷田圃。
(『江戸名所図会』より 塗り絵師:西尾 忠久)

つぶやき:これまで、数え切れないほどの証拠を残さない暗殺をしてのけているからこそ、〔丸太橋〕の与平次も半四郎を起用した。
しかし、いくら証拠を残さないためとはいえ、なんの罪もない駕篭かき2人まで殺してしまう非道さは、長年の敵探しで精神に異常をきたしているとしかおもえない。
〔丸太橋〕の与平次としては、半四郎のやり口を耳にするや、2度と依頼しないつもりになったろう。

「丸太橋」は、小石川の富坂下にもあるが、文庫巻11[密告]の〔珊瑚玉(さんごたせま)〕のお百が小女時代に働いていた富岡橋北詰の茶店〔車屋〕から、赤ん坊を抱いて故郷の上総(かずさ)へ帰るとき、丸太橋をわたっているから、池波さんの頭の中は、深川の丸太橋と断じた。
(参照: 〔珊瑚玉〕のお百の項)

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