刺客(しかく)・〔凄い奴〕
『鬼平犯科帳』文庫巻9に所載の[本門寺暮雪]は、井関録之助を狙って大坂から江戸へやってきた刺客(しかく)・〔凄い奴〕と、鬼平が決闘する物語。
8年も前の録之助の違約の片をつけるために〔凄い奴〕を差しむけたのは、大坂の香具師の元締・〔名幡(なばた)〕の利兵衛である。
(参照: 〔名幡〕の利兵衛の項)
年齢・容姿:記述はないが、30代半ばか。うすい眉、気味のわるいほど白い顔。針のような両眼。骨張った長身。
生国:西国のどこかと推量するが、不明ということに。
決闘にいたる経緯:〔凄い奴〕を先に見つけたつもりの録之助だったが、まかれて逆に尾行(つ)けられた。
それを知った鬼平は、〔凄い奴〕を池上の本門寺まで誘いだす。
結末:総門からのびる石段の上で待ちぶせされた鬼平は、斬りあいとなって危なかったが、柴犬に助けられて窮地をぬけ、ようやくに相手を殪しえた。
つぶやき:〔葛篭師(つづらし)〕紋造のこのコーナーにも記したが、池波さんの自選によるベスト5に、この篇も入っている。息づまる決闘場面もたしかに力作というにあたいするが、やはり、柴犬のアイデアがが湧いたとき、池波さんはホッと肩で息をついたのだろう。
(参照: 〔葛篭師〕紋造の項)
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コメント
おぉ!〔凄い奴〕登場!
出すのかな?出さないのかな?と思っていました。
もっと他にネーミングはなかったのか?と思いますが、意外にも〔凄い奴〕で印象に残っているので正解なんでしょう。
投稿: 豊島のお幾 | 2006.02.19 01:58
>豊島のお幾さん
>出すのかな?出さないのかな?と思っていました。
そうなんですよね。この仁について、細部にこだわる池波さんにしては、いつもと異なり、生国や素性を定かにしていませんよね。
もちろんそれは、読み手に緊迫感を与える術たとはわかっていても、素性を探索する側にしてみると、「もう少し、推理のヒントを書いておいてよ」といいたくなる。
でも、聖典は推理小説ではないのだから---ということで、採りあげることにしました。
投稿: ちゅうすけ | 2006.02.19 06:53