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2007.02.19

池ノ端の出会茶屋

池ノ端の出会茶屋が、『鬼平犯科帳』にはしばしば登場する。
[5-1 深川・千鳥橋]で、浅草・奥山の酌婦・お元を連れだした〔間取(まど)り〕の万三が大量に喀血するのも、ここの出会茶屋〔ひしや〕での寝床だ。

[5-3 女賊]で、〔猿塚(さるづか)〕のお千代が、親子ほども年齢の違う手代の幸太郎をたらしこむのも、同じ〔ひしや〕。

〔18-3 蛇苺〕で、〔布目(ぬのめ)〕の太四郎と女賊あがりのおさわが乳繰りあうのは〔月むら〕。

で、池ノ端というけれど、どんな場所だったろうと資料を探して、『風俗画報』(明治41年1月25日号)に、それらしい風景を見つけた。Photo_290

道からそのまま入り口なので、あっけらかんとしすぎている気味があるが、「池ノ端」と書かれている。
[女賊]では、男女とも駕籠で帰るから、これはこれでいいのかもしれない。

〔大滝(おおたき)〕の五郎蔵の一番手柄になる[深川・千鳥橋]から、それてしまったが、万三の喀血に驚かないお元という女性の造形はみごとだ。

父親も血を吐いて死んでいるし、彼女自身も、父親から病いを伝染(うつ)されているらしい。
だから、万三が、「死水をとってくれるか」と聞くと、なんでもないような声で、
「とってあげてもよござんす」と答える。

物語は、紆余曲折があって、深川・千鳥橋のたもとで、鬼平が「死にぎわは、きれいにしろよ」2人を見送ってやり、五郎蔵が平蔵に心服する結末となる。

お元が万三に寄り添っていることで、この篇の余韻が深く、深くなっている。

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