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2011.02.21

豊千代(家斉 いえなり)ぞなえ(7)

一橋の嫡男・豊千代(とよちよ 9歳)が将軍・家治(いえはる 45歳)の養君として西丸入りするにつき、幕府側は士分の従者は一人もまかりならぬと命じていた。

一橋治済(はるさだ 31歳)は、まだ幼ない豊千代がそれでは心細かろうと、同邸の家老の一人・田沼能登守意致(おきむね 41歳 800石)を西丸・小姓組番頭格で派したいと、家老どもの評定による懇願の形で、老中・田沼主殿頭意次(おきつぐ 64歳 相良藩主 3万7000石)に訴えた。

参照】2011年2月20日[豊千代(家斉 いえなり)ぞなえ] (

一橋家にくわしい辻 達也さんは、

通説この人事は田沼意次の勢力拡大の野望に基づくといわれるが、私はむしろ一橋が意次の意を迎えようと意図したものではないかと推察している。
豊千代に付けて公儀の役職に推薦したのも、意次から種々の便宜を得ようという治済の同様の意図からと考えている。

ちゅうすけは、策略家として長けた一橋治済の性格から、辻 説に右足を置きながら、左足では意次の近親者を身辺から遠ざけようとの狙いもあったのではあるまいかと推測している。

もちろん、辻 説を補強するものとして、一橋家---というより、三卿各家に与えられている10万石分からのあがりでは、家計は慢性的赤字で、幕府からの拝借金あるいは援助金の待望感もあったろう。

しかし、豊千代の西丸入りから5年後、天明6年(1786)8月下旬から9月上旬へかけて、家治の危篤と病歿を機におきた意次失脚の、その序幕がすでにこのころから練られていなかったろうか。、

豊千代を西丸に迎える陣容が着々とすすめられていた正5月26日の『徳川実紀』に、見落としそうな記述があるので、ちょっと横道にそれたい。

堺奉行佐野備後守政親(まさちか 50歳 1100石)大坂町奉行となり、駿府町奉行山崎四郎左衛門正導(まさみち 61歳 1000石)堺奉行となり、小普請組支配小田切喜兵衛直年(なおとし 39歳 2930石)駿府町奉行となる。(括弧内はちゅすけの補筆)

この記載のあとに、すぐ、つづいているのが、今月の6日前の15日に整理して引用した、

小姓組番頭---大嶋肥前守義里。酒井紀伊守忠聴。島津山城守久般。花房因幡守地正域。
持弓頭---根来喜内。殿
持筒頭---加藤登之助泰朝
先手頭---筧新太郎正知。篠山吉之助光官。山中平吉鍾俊。宇都野金右衛門正良。柘植五郎右衛門守清。大井大和守持長。
小姓組与頭--能勢半左衛門頼喬。清水権之助義永。青木小左衛門政満。小椋忠右衛門正員。
徒頭---筒井内蔵忠昌。山口勘兵衛直良。萩原求五郎秀興。万年市右衛門頼意。桑山内匠政要。
小十人頭---奥村忠太郎正明。大岡山城守忠主。土岐半之丞朝恒。
をはじめ、、それより下の者司多く、西城に勤仕すべきよし命ぜらる。
表右筆組頭・長坂忠七郎高美、西の奥右筆組頭となる。

参照】2011年2月15日[豊千代(家斉 いえなり)ぞなえ] (

横道にそれると断ったのは、このためではない。

この年---天明元年(1781)6月1日に事項に、

大坂町奉行佐野備後守政親赴任の暇たまふ。

つまり、平蔵(へいぞう)の仮兄にあたる佐野与八郎は、拝命のために上方から帰府していたことになる。
辞令が出た日に速飛脚で呼び戻しの便が送られたとして正味34日間---堺からの江戸まで17日間としても滞在は10日あるかどうかのあわただしさであったろう。

とはいえ、平蔵としては、ぜひとも一夕を共にしたかったであろう。
できることなら、そろって木挽町(こびきちょう)の中屋敷に田沼意次を訪ねたかった。
奥女中・佳慈(かじ 31歳)のささやきの真意もたしかめてみたかった。

参照】2007年6月4日~[佐野与八郎政信] () (
2007年6月5日~[佐野与八郎政親] () (
2007年6月7日~[佐野大学為] 
2007年7月20日[田沼主殿頭意次(おきつぐ)]
2010年9月19日~[佐野与八郎の内室] ( ) () () (

それと、もし、佐野兄者に日取りの余裕があれば、芝のニ葉町の藩の中屋敷での隠棲が長い本多伯耆守正珍(まさよし 70歳 前田中藩主)侯のご機嫌もうかがいたかった。

驚いたことに、田沼意次から、待っていると返書がきた。

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