〔小妻(こづま)〕の伝八
『鬼平犯科帳』文庫巻4に収められている[敵(かたき)〕で、10年前に、父親〔五井(ごい)〕の亀吉を殺害して盗めの分け前を奪ったのは、ならび頭(がしら)だった〔大滝(おおたき)〕の五郎蔵と、せがれの与吉をそそのかし、〔大滝〕の一味の乗っ取りを策した邪悪な盗人。錠前外しがうまい。
(参照: 〔五井〕の亀吉の項)
(参照: 〔大滝〕)の五郎蔵の項
年齢・容姿:中年。細っりとした躰つき。精悍だが陰気な顔貌。
生国:常陸(ひたち)国多賀郡(たがこおり)小妻村(現・茨城県常陸太田市小妻)
豊富な薪炭を利用して銑鉄を移入し、鍬先をつくる鍬鍛冶がさかんな土地、とものの本にある。
探索の発端:三国峠にさしかかった鬼平の剣友・岸井左馬之助が、敵討ちといって切り結んでいる2人の男を見かけた。若い方(与吉)は死んだ。
残った50男(五郎蔵)を尾行して住いをつきとめた左馬之助は、経緯を鬼平に報告、火盗改メによって五郎蔵の身辺が見張られた。
結末:本所の如意輪寺門前の花屋は〔大滝〕の五郎蔵の盗人宿の一つだが、番人の利兵衛が殺された。さらに、小梅村の盗人宿で待っていたのは、〔小妻(こづま)〕の伝八と五郎蔵を裏切った配下の者たちだった。亀吉を殺害したのは、盗め先の女を犯すくせを叱られた伝八だった。
配下にあわや殺されそうになったところへ、五郎蔵を尾行していた鬼平と岸井左馬之助が現われた。
つぶやき:池波さんとしては、密偵たちを束ねていく頭級が欲しかった。そこで、〔大滝〕の五郎蔵に白羽の矢が立った。
おまけに、〔初鹿野(はじかの)]一味の盗人宿の番をしているが、かつては〔蓑火〕の喜之助の下でいっしょだった〔舟形(ふなかた)〕の宗平まで加わったので、鬼平直属の密偵陣の層が一気に厚くなり、物語の展開の前途iに明るさが増し、連載長期化の足固めができた。
(参照: 〔蓑火〕の喜之助の項)
(参照: 〔初鹿野〕の音松の項)
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コメント
「敵」に書かれてい「五郎蔵」一味の押し込み
先は、駿府城下、尾張名古屋、江戸日本橋、
上州沼田、と随分テリトリーが広範囲です。
その度に、「盗人宿」もつくったのでしょう。
もっと、盗人の職域って、狭い地域だと、
思っていました。
投稿: みやこのお豊 | 2005.04.15 10:42
>みやこのお豊さん
〔大滝〕の五郎蔵がやった押し込みは、巻4[敵]に書かれている以外にも、巻7の平塚の隠れ家([掻掘のおけい])、巻12の高崎在の大庄屋([見張りの見張り])など、いろいろありますね。
巻7の[隠居金七百両]の〔井尻(いじり)〕の直七などとも顔見知りだったといいますし。
投稿: ちゅうすけ | 2005.04.16 10:50