〔長沼(ながぬま)〕の房吉
『鬼平犯科帳』文庫巻14に収録の[殿さま栄五郎]は、口合人[鷹田(たかんだ)〕の平十と、〔火間虫(ひまむし)〕の虎次郎一味の蹉跌から生じた、盗人界の掟てを描いている。
平十と虎次郎を結んだのが、〔火間虫〕一味でも幹部級の〔長沼(ながぬま)〕房吉である。「腕っ節の強いのを1人、大急ぎで世話してほしい」との虎次郎の手紙を持って、平十に頼みにきた。
(参照: 〔鷹田〕の平十の項)
年齢・容姿:どちらにも描写がおよんでいないが、〔火間虫〕の腹心とすると、中年。眼が鋭い。
生国:相模(さがみ)国大住郡(おおすみこうり)長沼村(現・神奈川県厚木市長沼)
別に、武蔵国葛飾郡や下総国埴生郡の長沼村も考えたが、文庫12の〔高杉道場・三羽烏〕で〔砂蟹(すながに)のおけいや〔笠倉(かさくら)〕の太平がからむ浪人盗賊・長沼又兵衛を探索するときまで取っておくことにした。
(参照: 〔砂蟹のおけいの項)
(参照: 〔笠倉〕の太平の項)
探索の発端:なやみきっている〔鷹田(たかんだ)〕の平十と出あった密偵〔馬蕗(うまぶき)が助人(すけっと)のことを引き受け、〔殿さま〕栄五郎に化けた鬼平が乗り出したはいいが、たちまちに化けの皮がはがれて---。
(参照: 〔馬蕗〕の利平治の項)
(参照: 〔殿さま〕栄五郎の項)
結末:芝・方丈河岸の盗人宿は火盗改メに踏みこまれて、〔火間虫〕の虎次郎一味は房吉も逮捕。死罪であろう。
つぶやき:この篇は、〔鷹田〕の平十を描くことで、口合人という裏の世界のパーソナル・エージェンシーの存在を示すことが、池波さんの創作動機だったのだろう。
「口合」は、「口入」以上に「保証する責任」が含まれている。この言葉を見つけたときの池波さんのにんまり顔が見えるようだ。
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