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2005.09.27

〔五条(ごじょう)〕の増蔵

『鬼平犯科帳』文庫巻14に収録の[殿さま栄五郎]で、急ぎばたらきが専門の〔火間虫(ひまむし)〕の虎次郎は、配下の〔長沼(ながぬま)〕房吉を使いにだし、谷中・三崎坂下の法住(受)寺(震災後、足立区伊興狭間へ移転)門前で花屋をやりながら裏で口合人稼業をしている〔鷹田(たかんだ)〕の平十に、血をみてもいいという腕利きを依頼させた。
(参照: 〔長沼〕の房吉の項 )
(参照: 〔鷹田〕の平十の項)
平十が紹介したのは、かつて大盗〔蓑火(みのひ)〕の喜之助のもとにいた、備前・岡山の浪人あがりで顔立ちも立派なら、目つきもやさしいが腕は滅法たつので〔殿さま〕栄五郎と呼ばれている助っ人だつた。
(参照: 〔蓑火〕の喜之助の項
(参照: 〔殿さま〕栄五郎の項)
その〔殿さま〕栄五郎をかいま見て、「あれは真っ赤な偽者」と喝破したのが〔五条(ごじょう)〕の増蔵である。
増蔵は、どういう理由があったのか、故〔狐火(きつねび)〕の勇五郎のもとから追放されたのだが、まだ〔狐火〕一味にいた時分、〔蓑火〕の喜之助のところへ貸しだされたこともあった。それで、〔殿さま〕栄五郎を見知っていしたのである。

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年齢・容姿:50がらみ。血色がよくない、頬骨が張り出した顔。痩せている。
生国:近江(おうみ)国野州郡(やすこうり)五条村(現・滋賀県野州郡中主(ちゅうず)町五条)。
京都を本拠としていた〔狐火〕一味にいたというから、近畿をまず選んだ。近江のここと、河内国河内郡五条村、大和国添下郡五条村、山城国愛宕町五条河原---なかでもっとも池波さんに縁が深いとおもったのが、野州の五条である。甲賀忍者ものの取材でしばしば訪れている。

探索の発端:じつは、〔鷹田〕の平十から事情をきいた密偵〔馬蕗(うまぶき)〕の利平治が鬼平へ報告。と、鬼平は〔殿さま〕栄五郎になりすまそう、といい出したした。
(参照: 〔馬蕗〕の利平治の項)
ところが偽者がばれ、〔鷹田〕の平十が〔火間虫〕一味に吊れだされたことから、事態が急にあわただしく展開しはじめた。

結末:芝・方丈河岸の盗人宿は火盗改メに踏みこまれて、〔火間虫〕一味は、増蔵も含めて8名が逮捕され、浪人くずれを含めて抵抗した5名が斬りすてられた。

つぶやき:テレビの〔五条〕の増蔵は、ざんぎり頭の法衣姿である。そのほうがちょん髷に着物姿の盗賊たちのなかでくっきりと際立つと考えられたのであろう。
類推すると、「京の五条の橋の上---」の小学唱歌がで、弁慶がひらめいての、脚本家か衣装係の知恵だったみたいにもおもえる。

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