女賊お杉
『鬼平犯科帳』文庫巻10に収められている[消えた男]の題名になっている男---火盗改メの元・同心高松繁太郎(当時27,8歳)とともに、属していた盗賊一味〔蛇骨(じゃこつ)〕の半九郎のもとから消えた女賊がお杉だった。
(参照: 〔蛇骨〕の半九郎の項)
本格派の盗賊〔千代ヶ崎(ちよがさき)〕の源吉のむすめ・お杉は、〔蛇骨〕一味の血なまぐさいやり方に嫌気がさしていた。
(参照: 〔千代ヶ崎〕の源吉の項)
〔蛇骨」一味の情報を高松同心へ売ることにしたが、高松が属している堀組では逃走資金の30両をケチった。
置手紙をして組屋敷から消えた高松繁太郎は、お杉とともにあちこちで盗みを働きながら潜伏をつづけたが、信州・上田でお杉ば病没。いまわのきわに、目黒の寺に眠っている父親の墓の隣へ埋めてほしいと懇願した。
繁太郎は遺髪を抱き、7年ぶりに江戸へ戻ってきたところを、いまは長谷川組に借りられて筆頭与力となっている佐嶋忠介とめぐりあった。
年齢・容姿:病死したときが34,5歳。盤台面(つら)。いさぎよい性格。
生国:武蔵(むさし)国荏原郡(えばらこおり)目黒村(現・東京都目黒区上目黒)。
探索の発端:お杉自身は病死しているので、探索の対象外。
高松繁太郎は、お杉の元情夫の〔笹熊(ささぐま)〕の繁蔵を殺して、目黒の墓のそばに立っているところを、鬼平に探りあてられた。
(参照: 〔笹熊〕の勘蔵の項)
結末:繁太郎は、鬼平のすすめで密偵となってみごとな働きをしたが、繁蔵の叔父〔蝋燭(ろうそく)屋〕六兵衛が雇った仕掛人に惨殺された。
(参照: 〔蝋燭屋〕の勘蔵の項)
つぶやき:元同心・高松繁太郎は、いっしょに7年間もにげまわったお杉のことを、「何事にもいさぎよい女でした」と鬼平に述懐した。
「いさぎよい」とは、済んでしまったことには愚痴をいわない、あきらめがいいとか、欲が強くない---といった意味があろう。
そういう、いってみれば、女の業みたいなものが少ない女性は、男にとっては理想だが、欲望をそそるようにできている現代社会では、稀有のことに属する。
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