浪人盗賊・滝口金五郎
『鬼平犯科帳』文庫巻17、長編[鬼火]の終末に名前があかされるだけだが、近江国・膳所生まれの浪人くずれ・滝口金次郎は、いまは隠退している元表御番医・吉野道伯(70歳近く)ぐるみの盗賊団の首領にかつがれている。
(参照: 表御番医・吉野道伯の項)
それというのも、3カ条を守りぬく本格派のお頭だった〔名越(なごし)〕の松右衛門が、一味が小網町の線香問屋へ押し入り、3000余両を奪ったとき、手代と小僧に重傷をおわせてしまったkことで落胆、盗金をすべて配下へ分配、独りで故郷の伊勢へ消えたあと、のこされた一味が滝口金五郎を首領にあおいだからである。
(参照: 〔名越〕の松右衛門の項)
年齢・容姿:43歳。大男。
生国:近江(おうみ)国滋賀郡(しがこおり)膳所(ぜぜ)]村。(現・滋賀県大津市膳所)。
駒込に〔権兵衛酒屋〕へ賊が押し入り、弥市夫婦を惨殺しようとするところを、鬼平が助け、弥市が逃げうせたことから、探索が始まった。謎は謎を呼び、600石の引退中の旗本・清水三斎までたどりついて、ようやく事件の真相が見えてくる。
(参照: 元旗本・永井弥一郎の項)
一方では、牛込の通寺町の薬種舗〔中屋〕へ賊が入り、家族・奉公人の全員23名を殺害し、大金のほかに秘伝の高貴薬〔順気剤〕まで奪った。ここにいたって、火盗改メの探索がはじまった。
結末:妖しい浪人たちを尾行しているうちに、関屋村の吉野道伯の寮がつきとめられ、次の狙い先が京橋・新両替町の菓子舗〔加賀屋〕であることが判明。待ち伏せていた鬼平の組に斬り殺されたり逮捕された。
滝口金五郎には一作年、麹町7丁目の呉服・太物問屋〔平松屋〕で一家皆殺しにした犯行もある。磔刑が至当。
つぶやき:〔権兵衛酒屋〕の襲撃と、清水老人、そして旗本・永井家、さらには大身・渡辺丹波守との結びつき、そして浪人盗賊・滝口金五郎の出番---どう糸がたぐられるのか。池波さんは、成り行きで書いてゆくというが、これだけの長篇となると、出たとこ勝負というわけにもいくまいに。
あえていうと、〔名越〕の松右衛門にしても滝口金五郎にしても、とってつけた感じがないでもない。つまり、ミステリー作法でいうところの「伏せ」が打たれていないのである。
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