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2005.09.21

女賊おしま

『鬼平犯科帳』文庫巻20の巻頭に置かれている[おしま金三郎]で、タイトルにも名前があがっているヒロイン---女賊おしまの両親は、本格派の大盗だった〔蓑火(みのひ)〕の喜之助に仕込まれていた。そのむすめのおしまも、お盗めは殺さず、冒さず、貧しきからは取らず---の3ヶ条をまもるものと信じていた。
(参照: 〔蓑火〕の喜之助の項)
ところが、一味としてはたらいている〔牛尾(うしお)〕の又平のさいきんの盗めぶりは、急ぎばたらきに変り、殺しもいとわなくなってきていた。
(参照: 〔牛尾〕の又平の項)
数年前、偶然に出会った、これも〔蓑火〕のところ育ちの与吉と出あい、悩みを打ち明けたら、火盗改メ同心・松波金三郎(当時27歳)に引き合わされた。松波は、〔牛尾〕一味の盗人宿を教えるかわりに、おしま(当時24歳)を逃がすと約束した。それに対しておしまは、松浪に弱みをつくらせるために、松波に抱かれることを提案、松浪も受け入れた。
〔牛尾〕一味の18人は一網打尽、おしまは巧みに逃がされたが、おしまを抱いたことが長谷川組内にばれて、松浪は火盗改メから放逐された。

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,年齢・容姿:この篇のこのときは27,8歳。色の浅ぐろい、下ぶくれの顔だち。左の顎に豆粒ほどの黒子。躰つきはすっきり(池波さんの頭にあったのは、若いころの木暮実千代、といっても、いまの人には通じまい)。
生国:肌が浅ぐろい、とあるから、江戸か関東のどこかとおもえるが、不明としておこう。

探索の発端:松波金四郎(30をこえている)がやっている麻布・田島町の鷺森神明宮(現在は港区白金2丁目の氷川神社へ合祀)脇の居酒屋へやってきたおしまが、〔牛尾〕の又平の実弟〔瀬田(せた)〕の虎蔵が、〔牛尾〕一味の逮捕に関係した同心・小柳安五郎の命をねらっている、と告げたことから、小柳同心の身辺に火盗改メの警戒網がしかれた。

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(右川向うが鷺森神明宮 『江戸名所図会』より 塗り絵師:ちゅうすけ)

結末:、〔牛尾(うしお)〕の又平の実弟〔瀬田〕の虎蔵はこしらえごとで、じつは〔牛尾〕一味が捕縛されたとき、その右腕の〔高山(たかやま)〕の治兵衛(50がらみ)だけが逃げおうせていて、小柳と松波への復讐をくわだてていたのであった。
(参照: 〔高山〕の治兵衛の項)
治兵衛は浪人を雇って金三郎を惨殺しようとしたが、金三郎はその場にあらわれた鬼平に助けられ、その後、〔高山〕の治兵衛も捉えられた。
が、これで結末---というわけではない。
数年前に、松波に5,6度抱かれたおしまは、松波が忘れられなくなった。ところが、事件がかたづくと、松波はおはまに見向きもしなくなったではないか。そこで、松波が組に居られなくいれば自分と添ってくれるとかんがえて、役宅の全員に自分たちの情事を暴露した手紙をばらまいていたのである。
数年後、松波金三郎とおしまが、上方で暮らしているのを、見かけた者があった。

つぶやき:シリーズもこのあたりまで引きのばされると、鬼平も行動も神出鬼没にちかくなる。
読み手も、そのことをゆるしてしまうほど、鬼平との一体感が強まっている。人気シリーズものの特典でもある。

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