女賊(おんなぞく)お民
『鬼平犯科帳』文庫巻11に、[雨隠れの鶴吉]の題名としてあげられている盗人(29歳)の女房がお民。中国筋から上方へかけてがテリトリーの〔釜抜(かまぬ)き〕の清兵衛の子飼いの配下。
(参照: 〔雨隠れ〕の鶴吉の項)
(参照: 〔鎌抜(かまぬき)〕の清兵衛の項)
夫婦して12年ぶりに物見遊山のつもりで江戸へ戻ってみると、鶴吉の実家である日本橋・室町2丁目の茶問屋〔万屋〕に、〔稲荷(とうが)〕の百蔵は以下の〔貝月(かいづき)〕の音五郎が引き込みに入っているのを、お民が見つけた。
(参照: 〔稲荷〕の百蔵の項)
(参照: 〔貝月〕の音五郎の項)
年齢・容姿:31歳。中年太りがはじまっている。
生国:武蔵(むさし)国江戸かその近郊(現・東京都下)
〔野槌(のづち)〕の弥平の配下にいたとき、ほとんど江戸で引き込みをやっていたが、一味が捕縛されたとき、あやうく逃れ、上方へ走って〔釜抜〕の清兵衛一味へ入った。
(参照: 〔野槌〕の弥平の項)
探索の発端:〔万屋〕へ宿泊することになった鶴吉・お民だったが、、そこに〔野槌(のづち)〕の弥平一味の生き残りの〔貝月(かいづき)〕の音五郎が下男として引き込みにはいっていることを、お民が見破った。
鶴吉は、八つ山の井関録之助にすべてを打ち明け、江戸を去る。それを見とどけた録之助は、火盗改メの役宅へ鬼平を訪ねた。
結末:〔貝月(かいづき)〕の音五郎に見張りをつけた火盗改メは、上州・武州をまたにかけて荒らしまわっている〔稲荷(とうが)〕の百蔵一味24名が〔万屋〕へ押しこんできたところを全員逮捕。
つぶやき:盗賊が盗賊を差す話は、聖典には数篇あるが、そのほとんどが怨念か金がらみで生臭い。
しかし、この篇は、親子の真情に基をおいた展開になっていて、読後感がすがすがしい。
往年の井関録之助と鶴吉とのからみも、難なくできあがっている。池波さんの物語づくりの巧みさを示している一篇といえる。
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