〔蓑火(みのひ)〕のお頭(4)
(忠助(ちゅうすけ)どんが言っていた、〔蓑火(みのひ〕の喜之助(きのすけ 45歳))のおんな軍者(ぐんしゃ)---甲州・八代郡(やつしろこおり)山中の中畑(なかばたけ)村の木こりのむすめ---〔中畑〕のお竜(りょう 28歳)というのは、どういう筋道のかんがえ方をするのだろう? できたら一度、話しあってみたいものだ)
寝着がはだけて、豊満な乳房をさらして眠っているお仲(なか 33歳)の襟をあわせてやると、
「うーん」
銕三郎(てつさぶろえう 22歳)のものを無意識にもとめて、指を下腹へ這わせてきた。
あてがっておいて、かんがえつづける。
これまでに、2人の女男(おんなおとこ)をしっている---いや、顔をあわせたことがあるのは、盗人専門の口合人稼業をやっていた[雨女(あまめ)のお時(とき 36歳=昨年)だけだが。
【参照】2008年6月8日~[明和3年(1766)の銕三郎] (2) (3)
お時では、〔雨女〕の故事を知らなくて、番町の大伯父・太郎兵衛正直(まさなお 58歳=去年)に赤恥をかいた。
お時かかわりで、〔荒神(こうじん)〕の助太郎の情婦・賀茂(かも 27歳=当時)の素性も知った。
この2人は、まだ、つかまっていない。
【参照】2008年3月23日[荒神の助太郎] (9) (10)
【ちゅうすけ注】賀茂が産んだ〔荒神〕の助太郎の子が、のちの2代目〔荒神〕のお夏(なつ 25,6歳=[炎の色])である。お夏も〔おんなおとこ〕に育ったが、このときは、銕三郎はそのことを知らない。
銕三郎が寝返りをうって、お仲の指がはずれると、
「え? なにか言いました?」
「なんだ、起きていたのか?」
「いいえ---」
「女男(おんなおとこ)に、知り合いはいないか?」
ぎゅっとつかんで、
「いませんよぉ」
そのまま、眠ってしまった。
女同士の出事(でごと 性交)は、塾の悪童がもってきた春画でみたことはある。
(栄里『婦美の清書』部分 掲載誌『芸術新潮』2003年1月号によると、欧米のコレクターのあいたでは、これが2番人気なのだと)
(まあ、男の画家が想像で描いたものが多いはず。おれが知りたいのは、〔神畑(かばたけ)の田兵衛(でんべえ)は火、〔中畑〕のお竜は水---と評されている、その[水]ぶりなんだ。おんなは直感が鋭い。お竜は、それが飛びぬけているんだろうか。しかも、冷静にそれを取捨しているんだ)
銕三郎を驚嘆させるような盗みが、その年の年末---というより、明和5年(1768)の元旦の暁闇のうちにおきた。
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