〔長虫(ながむし)〕の松五郎
『鬼平犯科帳』文庫巻9に所載の[鯉肝の里]で、お里の義父にあたる〔長虫(ながむし)〕の松五郎は、、いまでこそ煙管師として、三つ橋に近い京橋・柳町の裏店で安穏に暮らしているが、20年前までは、独りばたらきでながれ盗めのすご腕の盗っ人であった。
(参照: 〔鯉肝〕のお里の項)
5年前に亡くなった息子の嫁だったお里も、盗みの世界へ入り、江戸で骨休めをするときは松五郎の家へころがりこんで、博打と男買いにはげんでいる。
年齢・容姿:70すぎ。容姿の記述はない。歩きぶりはとぼとぼと。
生国:煙管づくり・合鍵づくりの修業は、若いころに江戸でしたとおもうが、正確を期して、不明としておく。
探索の発端:牛の草橋の上で腹をすかしきっている若者に一膳めし屋で食事をふるまっていたやったことから、おまさの注意を引き、松五郎の住まいが知れた。
(参照: 女密偵おまさの項)
密偵〔舟形(ふながた)〕の宗平が、おもいだしたのは、〔初鹿野(はじかの)〕の音松一味にいた27年ほど前、駿府の仏具問屋〔伊勢屋〕を襲ったときに助(す)けばたらきにきていた〔長虫〕松五郎と気があってたがいに身の上話をしたと。
(参照: 〔舟形〕の宗平の項)
(参照: 〔初鹿の〕の音松の項)
4年前にも、20数年ぶりに目黒の太鼓橋でばったり出会い、鰻を食べながら旧交をあたため、忘息の嫁が〔鯉肝のお里〕と打ち明けた。
結末:すっかり足をあらって、いい煙管をつくっているのだから、放っておけと、鬼平の粋な裁き。
つぶやき:〔長虫〕は、煙管の別称。
[穴] で、盗みの血のさわぎをどうすることもできなかった〔帯川(おびかわ)〕の源助のような、また、〔老盗の夢〕の〔蓑火〕の喜之助のようなも、生ぐさい欲情は再燃しないのだろうか。
〔参照: 〔帯川〕の源助の項〕
〔参照: 〔蓑火〕の喜之助の項〕
とすると、老後の過ごし方もいろいろなんだなあ。
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コメント
「長虫とは最初蛇のことだと思ったが煙管のことだったんだな。」 平蔵の煙草好きと良い関連です。 鯉肝のお里も島帰りの後は長虫の松五郎の家に帰り、堅気に暮らすのだったらめでたしですね。
投稿: edoaruki | 2005.08.30 10:02