お勝からの手紙(2)
長谷川平蔵(へいぞう 29歳)は、銕三郎(てつさぶろう 27歳)時代に、お勝(かつ 31歳)を抱いたことがある。
それまでのお勝は、同村出身のお竜(りょう 享年33歳)のおんなであった。
だから、お勝にとっては、銕三郎が31歳で初めてむかえいれた男ということであった。
【参照】2009年8月4日~[お勝、潜入] (1) (2) (3) (4)
2008年10月12日~[お勝という女] (1) (2) (3) (4)
お勝の、いわゆる立ち---男役としての恋人であったお竜(りょう )が事故で水死(享年33歳)した直後のことであった。(お勝のイメージ)
その後は、20歳ほども齢下のお乃舞(のぶ 15歳)という子に、こんどはお勝が、お竜(りゅう)が自分にしてくれた愛撫をほどこした。
それで銕三郎は、お勝との男とおんなとしてのかかわりは終わったとおもっていた。
ところが、手紙によると、10月(陰暦)の半ばに、お乃舞と妹をつれて京を発(た)ち、江戸へ向かったとあった。
平蔵が早飛脚便を手にしたのは、10月の20日を3日もすぎていた。
「銕(てつ)さまへのおねがいは、わたしたち3人が安んじて住める家をさがしておいてくださることです。
〔狐火(きつねび)〕のお頭(かしら)は、とりあえずは、寺しま村のぐうや(寓屋)に住めとおっしゃってくださいました。
あそこは、お竜お姉(ねえ)さんとくらしたことがあるから、ようす(様子)はよくわかっていますが、ごふない(府内)にとおすぎます。
そう申したら、きくじんみち(菊新道)の[山科屋(やましなや)〕をおしめしくださいました。
江戸へつきましたら、おしらせいたします」
読みおえた平蔵は、すぐさま、深川の黒船橋詰の町駕篭〔箱根屋〕の権七(ごんしち 43歳)へ相談をかけた。
【参照】2010年4月12日~[お勝からの手紙] (1) (3) (4) (5)
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