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2010.08.23

お静の死(2)

「〔大滝おおたき)〕の五郎蔵(ごろそう 40歳)という一番小頭は、どのような仁ですか?」
平蔵(へいぞう 32歳)が訊いた。

蓑火みのひ)〕の喜之助(きのすけ 55歳)のところには、3人の有能な小頭がいたことは、〔たずがね)〕の忠助(ちゅうすけ 享年53歳)が話してくれたことがあった。
大滝〕の五郎蔵、〔五井ごい)〕の亀吉(かめきち 39歳)、〔尻毛しりげ)〕の長吉(ちょうきち 33歳)の3人であった。

参照】2008年8月30日[〔蓑火(みのひ)〕のお頭] (2) 

3人のうち、〔大滝〕の五郎蔵、〔五井〕の亀吉が組み、ならび頭(がしら)ということで独りだちすることになっている、と〔瀬戸川せとがわ)〕の源七(げんしち 61歳)が洩らした。

参照】2010年7月6日[〔殿(との)さま〕栄五郎] (

源七のお頭・〔狐火きつねび〕の勇五郎(ゆうごろう 57歳)と〔蓑火〕が親しいので、そういう話もたちまち伝わった---というより、勇五郎が相談にのったというほうがあたっていた。
その機に、一番小頭へ昇格する長吉は、名を長右衛門とあらためるということなので、今後はその名で記すことにする。

亀吉長右衛門には会ったことがあるので、五郎蔵の人柄を聞かせてほしいとうながすと、
亀吉どんを刃物にたとえると、よく研(と)がれた剃刀(かみそり)、五郎蔵どんは大仕事につかう鉞(まさかり)---どこまでも頼りになる仁です」

参照】2008年10月10日~[〔五井(ごい)〕の亀吉] () (

「まさかり---なあ」
うなずいた小波(こなみ 38歳)が、8歳齢下の亭主・今助(いすけ)をこづき、
「ほかのお座敷のお客人のご機嫌をうかがってきますよって、どうぞ、ごゆるりと---」
消えた。

_130平蔵が酌をしてやりながら、さりげなく、
おまさに、その後、会いましたかな?」
源七の盃から酒がこぼれた。
あわてて手拭でぬぐい、
「〔乙畑おつばた)のお頭のところと聞いておりますが---」
目をふせたままで応えた。(清長 イメージ)

平蔵の中のおまさは、13,4歳から成長していなかった。
「達者でいれば、それでいい。出会うようなことがあったら、たまには顔をみせよ、久栄(ひさえ)---奥です、久栄も案じていると伝えていただきたい」

参照おまさの年譜

そりきり、おまさまのことは忘れたように、酒を含み、料理をつまんだ。
源七も口を開くきっかけがつかめず、気のりがしない様子で箸をうごかしていた。

_120ちゅうすけ注】〔狐火〕の又太郎(20歳=今年)がおまさ(22歳=情事当時)に抱かれて男に脱皮したのは翌年21歳の春で、そのためにおまさは〔狐火〕から追放されている。すでに接触があり、源七おまさの心のうごきを予想していたのではなかろうか。

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080おまさ」カテゴリの記事

コメント

平蔵さんが瀬戸川の源七さんに会いたがったのは、おまささんの消息をたしかめるためだったのですね。ところが報らされたのは、お静さんの死。
平蔵さんのやさしさと、お久さんの登場の下ごしらえと、あくまで慎重なすすめ方。
おまささん、どこでどうしているのでしょう?

投稿: tomo | 2010.08.23 05:04

過去記事にリンクを張りめぐらせていただいているので、簡単に飛んでゆけます。
どなたかも感心してコメントしていらっしゃいましたが、ほんとうに配慮のゆきとどいたブログだとおもいます。
こういうのを、平蔵流の気くばりっていうのでしょうね。

投稿: yama@ | 2010.08.23 05:23

>tomo さん
おまさはどこにいるのでしょうね。
このあと2年後には、又太郎を脱皮させていますから、狐火の近くにいたとは推察している.のですが。

投稿: ちゅうすけ | 2010.08.24 04:07

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