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2010.07.26

藤次郎の初体験(6)

「13歳は、なんとしても早すぎる」
藤次郎の初体験をめぐって、こんなご意見もあった。
そうかもしれない。

初体験は、機会とはずみの結果ともいえる。
もちろん、道徳観、家庭のしつけ、社会的しばりのせいもある。

銕三郎(てつさぶろう)にしても、東海道を上る旅に出なければ、25歳の若後家・お芙佐(ふさ)と寝所をともにすることもなかったであろう。

が、あったからこそ、ふたしかな妄想ではなく、実の肉体を通して、異性という生涯の探求の的を14歳で得たともいえよう。

初体験は、早い、遅いより、だれから、どんな手ほどきをえたかのほうが、あとあとの性の意識の方向がきまるのかもしれない。

たとえば、岸井左馬之助
上総国・印旛沼のほとりの臼井から江戸へ出きたものの、高杉道場の隣家・草分名主とちもいうべき田坂の孫むすめ・おふさに対しては、22歳の田舎出の純情な若者にすぎなかった。

参照】2008年4月9日[〔初鹿野(はじかの)〕の音松] (
2008年4月10日[岸井左馬之助とふさ

それが、ふとしたことから、盗賊の子持ちの後家・お(こん 28歳)と知り合った。

参照】2008年5月4日~[〔盗人酒屋の忠助] () () (

は、急死した亡夫の遺骨収めに足利へ行ったばっかりに、色好みの首領・〔法楽寺ほうらくじ)〕の直右衛門(なおえもん 40がらみ)に性戯をしこたましこまれた。
ふつうなら、仕立てものの賃仕事をしている裏長屋の後家として、終わっていたかもしれない。
江戸へ戻り、左馬之助を遊びの相手に選んだ。
左馬之助とすれば、初の性体験であった。

参照】2008年8月27日[〔物井(ものい)〕のお紺] () (

いちど体験してしまうと、機会さえあれば、いや、機会は自らつくってでも、お習(さら)いをすすんでやるようになるのが、まともな若い男(おんなも)の、この道の常である。

参照】2008年10月17日~[〔橘屋〕のお雪] (1) (2) (3) (4) (5) (

もう一人の剣友---井関録之助はどうであろう。
30俵2人扶持の軽輩の脇腹の子として生まれてしまった。
どうしたはずみか、本所・出村の高杉道場に入門し、銕三郎左馬之助を兄(あに)弟子にもった。
それで、日本橋室町の茶問屋〔万屋〕源右衛門の妾の子・鶴吉としりあい、その乳母のお(もと 31歳)とねんごろになった。
は、瓦焼き職人の後家であった。

参照】2008年8月21日~[若き日の井関禄之助] (

ちゅうすけのお断り】[若き日の井関禄之助](2)は、バソコンの誤操作で消去してしまった。

大筋は、高杉道場の稽古を、窓からのぞくのが鶴吉(つるきち 6歳)の日課のようになっていた。
鶴吉が野良犬に悪さをして吠えられているのを録之助(18歳)が助けたのが縁で、鶴吉とおが暮らす日本橋室町の茶問屋の寮に起居することになり、どちらからともなく抱きあった。
もちろん、教えたのはおだが、録之助が覚えこむのも早かった。

 (2) (3) (4) (

もう2,3人、年増の手ほどきで男になった仁を紹介したいのだが、当ブログの中では、おもいあたらない。
ま、聖典『鬼平犯科帳』文庫巻6[狐火きつねび)]を読み返し、おまさ(22歳)が1歳下の又太郎を男にしてやったくだりでも連想するんですな。


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コメント

性的初体験の許容は、民族、宗教、時代、環境によります。
日本でも戦国期には13歳で初陣し首級をあげた若武者もいます。そういう早熟の子であれば、早く体験するでしょう。
栄養とマスコが氾濫しているいまも、概して性的には早熟になり、道徳観も変わりましょうね。
ちゅうすけさんのこのブログの記述は、7000石という当時とすれば特権階層の特殊な風俗ですから、見過ごしていいのではないでしょうか。

投稿: 左馬 | 2010.07.26 06:26

性愛の問題は、文学の一大主題です。
あとは、死と信義。
平蔵の信義と死は描きやすいし、ブログでもこれまでもときどきに触れています。
愛については、久栄とお竜・里貴にことよせて触れかけましたが、性はもっと深い根源的なもの、生命的なものようにおもえてなりません。
折ふし、立ち寄ってみたいとおもっています。、

投稿: ちゅうすけ | 2010.07.26 11:36

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