〔門原(もんばら)〕の重兵衛
『鬼平犯科帳』文庫巻8の[白と黒]にほんの数行だけ書かれている首領。
年齢・容姿:書かれていないため、不明。
生国:信濃国伊那郡門原村(現・長野県下伊那郡阿南町富草 門原)
探索の発端「その男、異名を〔翻筋斗(もんどり)の亀太郎〕といい、平蔵が去年の春(注・寛政4年 1792)に捕らえた門原(もんばら)の重兵衛一味の盗賊であった」
[白と黒]の篇の主役は、お目見え泥の女2人と〔翻筋斗〕の亀太郎であり、〔門原〕一味が捕らえられるときに逃げおうせた亀太郎の説明として、重兵衛が添えられている。
結末:「盗賊改方が、高輪台町の小さな寺に潜み隠れていた門原の重兵衛以下十一名を捕らえたのは、去年の二月末の或日の夕暮れであった。
平蔵みずから出役(しゅつやく)し、与力・同心合せ十三名、捕方十名をもって、件(くだん)の寺を包囲し、いっせいに打ちこんだ」
逃げおうせた亀太郎を除く一味は、死罪だったろう。
つぶやき:火盗改メと盗賊団の知恵比べ・力比べの物語がこのシリーズのはずだか、中に、探索の経緯を省略したものがいくつかある。
〔門原〕の重兵衛もその1人----それを、執拗に調べたのが、学習院生涯学習センター〔鬼平〕クラスでともに学んでいる新兵衛さんである。
池波さんが調べたにちがいない、伊那から遠江国へ抜ける遠州街道へ着目し、「八幡宿-時又宿-阿知原宿-粒良脇宿-山田河内宿-合原宿-雲雀沢宿-粟野宿-門原宿-早稲田宿-帯川宿-新野宿と、長野県側に12の宿場」を見つけた。
詳細の書かれていない逮捕劇を、自分流に組み立てて想像してみるのも、このシリーズを読む、楽しみ方の一つともいえようか。
探索の発端や逮捕の経緯が書かれていない逮捕劇
探索の発端や逮捕の詳細ん書かれていない逮捕劇
文庫 篇名 事件
[1-4 浅草・御厩河岸] 〔真泥〕の伊之助を堀帯刀が逮捕。
(参照: 〔真泥〕の伊之助の項)
[1-7 座頭と猿] 〔五十海〕の権平を逮捕。
(参照: 〔五十海〕の権平の項)
[2-1 蛇の眼] 〔上蚊野 〕の乙五郎逮捕
(参照: 〔上蚊野 〕の乙五郎の項 )
[2-4 妖盗葵小僧] 〔赤観音〕の久兵衛を高崎へ出張って逮捕。
(参照: 〔赤観音〕の久兵衛の項)
[4-5 あばたの新助] 〔神崎〕の弥兵衛一味を越ヶ谷へ出張って。
(参照: 〔神崎〕の弥兵衛の項)
[8-2 あきれた奴] 〔日影〕の長右衛門一味の逮捕。
(参照: 日影の長右衛門の項)
[10-3 追跡] 岡部へ急行、坂田一味11名を捕縛。
[10-6消えた男] 高松元同心の働きで5組の盗賊を逮捕。
[12-1いろおとこ] 〔舟見〕の長兵衛一味、
(参照: 〔舟見〕の長兵衛一味)
〔鹿熊〕の音蔵一味の逮捕。
(参照: 〔鹿熊〕の音蔵の項)
[13-2 殺しの波紋] 〔高窓〕の久兵衛の後釜の浪人逮捕に小田原へ。
(参照: 〔高窓〕の久兵衛の項)
〃 3年前、〔下津川〕の万蔵一味6名を逮捕。
(参照: 〔下津川〕の万蔵の項)
[14-4 浮世の顔] 〔神取〕の為右衛門に何度か臍を噛だ。
(参照: 〔神取〕の為右衛門の項)。
[14-5 五月闇] 〔四ッ屋〕の島五郎を逮捕。
(参照: 〔四ッ屋〕の島五郎の項 )
[16-6 霜夜] 〔須の浦〕の徳松一味を池田又四郎が襲う。
(参照: 〔須の浦〕の徳松の項 )
[18-4 一寸の虫] 〔不動〕の勘右衛門一味の逮捕。
[20-1 おしま金三郎] 牛尾一味の逮捕。
(参照: 〔牛尾〕の又平の項)
[21-4 討ち入り市兵衛]〔蓮沼〕の市兵衛。
(参照: 〔蓮沼〕の市兵衛の項)
[21-5 春の淡雪] 〔雪崩〕の清松の密告により3件の事件が解決。
[24-1 女密偵女賊] 浪人:大野甚五郎を逮捕。
などがあり、自分で勝手に、探索の発端や見張りの手配、結末などが空想できる。[1-4 浅草・御厩河岸] 〔真泥〕の伊之助逮捕
[1-7 座頭と猿] 〔五十海〕の権平逮捕
[2-1 蛇の眼] 〔上蚊野 〕の乙五郎逮捕
[2-4 妖盗葵小僧] 〔赤観音〕の久兵衛逮捕
[4-5 あばたの新助] 〔神崎〕の弥兵衛逮捕
[8-2 あきれた奴] 〔日影〕の長右衛門逮捕
[8-5 白と黒] 〔門原〕の重兵衛逮捕
[10-3 追跡] 〔坂田〕一味の逮捕
[12-1 いろおとこ] 〔舟見〕の長兵衛と
〔鹿熊〕の音蔵逮捕
[13-2 殺しの波紋] 〔下津川〕の万蔵逮捕
[14-4 浮世の顔] 〔神取〕の為右衛門取り逃がし
[14-5 五月闇] 〔四ッ屋〕の島五郎逮捕
[16-6 霜夜] 〔須の浦]の徳松逮捕
[18-4 一寸の虫] 〔不動〕の勘右衛門逮捕
[20-1 おしま金三郎] 〔牛尾〕一味逮捕
{21-4 討ち入り市兵衛] 〔蓮沼〕の市兵衛の盗みを逃した
[21-5 春の淡雪] 3件の盗難事件
[24 女密偵女賊] 浪人・大野甚五郎逮捕
2005年06月07日、阿南町に門原を訪ねた。
経路などの詳細は、 〔帯川〕の源助
を参照されたい。
阿南町役場前から151線を北上すること7分(3キロ)ほどで、集落(現・60戸ほど)のとっかかりの門原川にこの橋が架かっていた。
阿南町のURL
http://www.town.anan.nagano.jp/
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コメント
へえ、探索の端緒や逮捕の経緯の詳細が書かれていない逮捕劇が、これほどあるとは存じませんでした。
西尾先生の「つぶやき」どおり、19件の逮捕劇を『鬼平犯科帳』のほかの逮捕劇にならいながら、これまでになかった探索法や経緯を考案するだけで、半年はつぶれそうですね。
一つでも思いついたら、このサイトで発表させていただきます。
池波文学賞---いや、『鬼平犯科帳』補充賞を、む文春文庫が設定すべきかも。
投稿: 文くばり丈太 | 2005.01.11 09:40
>文くばり丈太さん
このリストは、NHK文化センターの〔鬼平〕クラスだったか、鬼平熱愛倶楽部の前身の江東区砂町文化センターの〔鬼平〕クラスだったかのメンバーが、1人1巻ずつ分担手わけしてつくったものです。
24巻ある『鬼平犯科帳』のリサーチも、上記の方法でおこなえば、そう大変ではありません。
各地ごとにファンが公民館を中心にでも集まって〔鬼平〕グループをつくれば、たいていのリサーチはするするとできてしまいましょう。
書かれていない盗人の探索法にしても、火盗改メ方、密偵組、盗人側にわかれて攻防を話しあえば、経緯をつむぎだすのは意外と簡単かも。
投稿: ちゅうすけ | 2005.01.11 10:54
リストに上がっている、19人の盗人うち〔真泥(まどろ)〕と〔五十海(いかるみ)〕、〔赤観音(あかかんのん)〕と今日の〔門原(もんばら)〕は、すでにこのサイトで取り上げられています。
1か月も経たないで、取り上げ率21パーセントとはすごいスピードですね。
こんごが、いよいよ楽しみです。
投稿: 加代子 | 2005.01.11 13:45
どなたかも書いていらっしゃいましたが、日替わりで登録される盗人が登場している篇を読みかえすと、前にきちんと読んだはずなのに、当サイトから教わることを、ほとんど意識しないで読みすごしていたと、思い知ります。
〔鬼平〕クラスをまだ受講していませんが、当サイトにアクセスすることで、受講と同じほどの刺激をうけています。
定年になって時間が自由に使えるようになったら、まっさきに〔鬼平〕教室へ入れていただきます。
投稿: 横浜のムー | 2005.01.11 18:56
>ムーさん
当サイトへのご入来、ありがとうございます。
>定年になって時間が自由に使えるようになったら、まっさきに〔鬼平〕教室へ入れていただきます。
「お待ち申しあげております」といいたいところですが、ムーさんの定年が何年先か存じませんが、それまで、こちらの体力が保っていればよろしいのですが。
なにせ、けっこうな老騎----岡部へ引退した[女賊](文庫巻5)の〔瀬音〕の小兵衛よりも馬齢をうーんと重ねており、[討ち入り市兵衛](文庫巻21)の〔蓮沼〕の市兵衛より歳をくっていますから。
まあ、史料・資料はシートにして、20冊以上の「鬼平本」が書けるほどの膨大な枚数、クラスの人たちへ渡していますから、あとは、いまのクラスのどなたかが中心になってつづけて行かれるとはおもっていますが---。
投稿: ちゅうすけ | 2005.01.12 02:05